日本の食卓に欠かせないウナギ。その救世主となるかもしれないとある「代用品」を、ウナギとは一見縁のなさそうなイスラエルの企業が開発するというニュースが注目されています。

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培養ウナギの開発生産を「イスラエル」のスタートアップ企業が行うワケ

培養ウナギの開発と生産

「細胞培養技術」で食糧増産問題の解決を目指すNPO法人「日本細胞農業協会」が、先月とあるミニセミナーを実施しました。そしてその基調講演として、イスラエルのスタートアップ企業「Forsea」のCEOによる公開講演が行われました。

培養ウナギの開発生産を「イスラエル」のスタートアップ企業が行うワケイスラエルでウナギ!?(提供:PhotoAC)

その講演の中で、同社が今後「培養ウナギ」の開発に取り組み、2026年までに生産を開始すると発表。細胞培養の業界のみならず、水産業界でも今大きな話題となっています。

「培養ウナギ」とは何者か

培養とは、生物の細胞や体組織を人工的に製造すること。つまり培養ウナギとは「人工的に作られた、本物のウナギと同じ組成の食材」ということになります。

培養技術はもともとは再生医療等の医学分野で注目されてきましたが、最近では食料生産における分野でも大きな注目を集めています。最も有名な「培養肉」についてはご存じの方も多いのではないでしょうか。

培養ウナギの開発生産を「イスラエル」のスタートアップ企業が行うワケいわゆる代用ウナギとは異なる(提供:PhotoAC)

環境に与える負荷や食肉加工における倫理など、畜産には解決困難な数多の問題があります。これをクリアし、誰もが安心して食べられる食材として「培養肉」は期待され、数年前にはこれで作られたハンバーガーも話題になりました。

そして近年はその魚版と言える「培養魚」もまた脚光を浴び始めています。培養ウナギはそのひとつなのです。

なぜイスラエルの企業が?

さて、今回注目を集めているのは、そんな培養ウナギの開発を進めているのが「イスラエルの企業」であるということ。

イスラエルで多数派となっているユダヤ教では「鱗のない魚を食べてはいけない」という戒律があり、ウナギを食べることはできません(厳密には非常に細かい鱗はありますが……)。なのになぜ、そんなイスラエルの企業が培養ウナギを開発するのでしょうか。

実は今、イスラエルは世界で最もスタートアップ企業が多い国のひとつ。国を挙げてサポートする体制があり、若い人たちも柔軟に起業をしています。

さらに世界的な潮流として、今後訪れるとされる食糧生産危機やSDGsの盛り上がりを見据え、培養肉など食料アグリテック分野での起業が盛んとなっています。そのためイスラエルにおいても、この分野でのスタートアップ企業が増えているのです。

培養ウナギの開発生産を「イスラエル」のスタートアップ企業が行うワケ培養技術が食料生産分野で重要に(提供:PhotoAC)

培養ウナギの生産を発表したForsea社もその一つ。高度な培養技術をバックグラウンドに様々なシーフードの培養を模索した結果「ウナギの培養が最も採算性が高い」と判断し、参入につながったのだそうです。

採算性が高い理由は「日本」に安定的かつ強固な市場があるから。御存知の通り、ニホンウナギは絶滅危惧種であり、価格も高騰してすでに庶民の口に入りにくくなりつつあります。培養ウナギであれば資源量に関係なく一定数を流通させることができ、本物のウナギより安い価格を設定しても利益を上げることができると見られているのです。

今後、イスラエルの企業が作る「代用だけど本物」のウナギが、我々の口に入るようになるかもしれません。

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<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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