スマホやパソコンが当たり前の現代では、同じく近視も当たり前のようになっています。

特に東アジアでは急速に近視になる人が増加しており、韓国では19歳の男性の96.5%が近視だと言われるほど。

「窪田製薬ホールディングス株式会社」は、2022年8月1日付で、近視を改善する「Kubota Glass(クボタメガネ)」の日本での販売開始を報告(PDF)しました。

Kubota Glassには、AR(拡張現実)によって家でも遠くを見ているような映像環境をつくり出し、近視を改善する効果があります。

伸びてしまった眼軸長をAR技術で縮める「Kubota Glass」

現在、近視は眼鏡やコンタクトレンズ、レーシック手術などで比較的簡単に矯正できます。

そのため近視を治療・改善しようと考える人がそこまで多くありません。

近視だと眼疾患のリスクが高まる
Credit:Kubota holdings(YouTube)_クボタメガネテクノロジー(2022)

しかし近年では、近視が緑内障などの眼疾患リスクを高めると報告されています。

つまり幼少期から進行する近視を放置しないことは、健康的な生活を続ける上で非常に大切なことなのです。

近視は、近くを見続けて眼軸長(角膜から網膜までの長さ)が伸びることで生じます。

眼軸長が伸びる(左)と、網膜の手前でピントが合う(右)ようになり、遠くが見えない
Credit:Kubota holdings(YouTube)_クボタメガネテクノロジー(2022)

これにより網膜の手前でピントが合うようになり、遠くが見えづらくなるのです。

眼鏡やコンタクトレンズはこのピントを網膜上に再び合わせるよう助けてくれますが、全てが適切に調整されるわけではありません。

網膜の中心部ではピントが合いますが、周辺部では奥にピントがずれてしまうのです。

眼鏡を付けても網膜周辺ではピントが奥にズレてしまい、結果として眼軸長が伸びてしまう
Credit:Kubota holdings(YouTube)_クボタメガネテクノロジー(2022)

眼球は網膜周辺部のピントのずれにも対応しようとするので、再び眼軸長が伸び、視力の低下が進行してしまいます。

では、どうすれば近視の進行を抑えたり、改善したりできるのでしょうか?

昔からよく言われているように、「遠くを見る時間を増やせば良い」のです

しかし、都市化が進んだ現代社会で、遠くの景色を見続けることは簡単ではありません。

そこでKubota Glassが役立ちます。

AR技術により、遠くをみているような映像環境を作り出す
Credit:Kubota holdings(YouTube)_クボタメガネテクノロジー(2022)

Kubota Glassは、AR(拡張現実)技術によって家の中でも遠くを見ているような映像環境をつくり出し、眼軸長が通常に戻るよう促します。

ARと言っても、遠くの景色が絶えず現実世界に映し出されるわけではありません。

私たちの目には、現実世界に8つの印が付加されたように見えます。

(左)8つの印が現実世界に付加される。(右)それぞれの印は網膜の手前で焦点を結び、「遠くを見ている状態」を作り出す
Credit:Kubota holdings(YouTube)_クボタメガネテクノロジー(2022)

実はこの印が網膜の手前で焦点を結ぶよう投影されており、眼球に遠くを見せているような映像環境を与えているのです。

しかも、装着者の半分は脳の錯覚により、30分程度で印を認識できなくなるとのこと。

半数の人は、30分で(左)から(右)の見え方に変化する
Credit:Kubota holdings(YouTube)_クボタメガネテクノロジー(2022)

1日のうちKubota Glasを1~2時間かけるだけ眼軸長が短縮されるので、そこまで不便でもありません。

Kubota Glasに利用されているいくつかの技術は既に特許取得済みであり、Kubota Glass自体も2022年8月1日から日本で販売開始されました。

メーカー小売価格は70万円とかなり高めですが、近視になって眼鏡やコンタクトレンズ代を払い続けることや、眼疾患のリスクを低減できることを考えると妥当なのかもしれませんね。

参考文献
kubota glasses is a new wearable device to cure or improve nearsightedness