2015年4月のロンドン、イースターホリデー真っ只中の街で、英国史上最高額の窃盗事件は起きた。

実際の大事件を題材にした、映画『キング・オブ・シーヴズ』の配信が「dTV」にてスタート。イギリスの名優を集めたキャスティングは必見、垂涎ものだ。

被害総額、約25億円!窃盗団のリーダーは77歳の“泥棒の王”

2015年、ロンドン随一の宝飾店街・ハットンガーデンの貸金庫から、現金や宝石類など約1400万ポンド(当時のレートで約25億円)が盗まれた。“英国史上最高額”と言われたその被害額もさることながら、人々を驚かせたのはその犯人だ。

なんと、窃盗団の平均年齢は60歳以上。多数の犯罪歴を持ち、「キング・オブ・シーヴス(泥棒の王)」と呼ばれた当時77歳のブライアンを筆頭に、昔の仲間たちが集結して起こしたまさかの大事件だったのである。

犯罪は犯罪であるが、このセンセーショナルな事件を映画化すべく、『博士と彼女のセオリー』を手掛けたイギリスの名監督ジェームズ・マーシュがメガホンを取った。

『キング・オブ・シーヴズ』に集う名優に注目

映画『キング・オブ・シーヴズ』でもっとも注目すべきは、そのキャスティングだろう。

窃盗団ナンバー2のテリー役には『パディントン』シリーズのジム・ブロードベント、チームの中ではまだ若く行動派なダニーに『ブラック・ウィドウ』の悪役ドレイコフ役が記憶に新しいレイ・ウィンストン。

さらに、とぼけた古物商のビリー役には、『ハリー・ポッター』のダンブルドア校長役で知られるマイケル・ガンボンなど、粒ぞろいのイギリス俳優が集結。

主役である窃盗団のボス・ブライアン役には、アカデミー賞で2度のオスカーに輝き、クリストファー・ノーラン監督『ダークナイト』3部作などに出演している重鎮、マイケル・ケインが鎮座。クリストファー・ノーラン監督の映画に8作も出演している、“ノーラン映画のあのおじいちゃん”である。

『キング・オブ・シーヴズ』のあらすじ

かつて「泥棒の王」と呼ばれたブライアン(マイケル・ケイン)は、一度は裏社会から引退し、愛する妻と平穏な日々を過ごしていた。しかし、妻の急逝をきっかけに、かつての犯罪にまみれた自分が呼び起こされる。

知人のバジル(チャーリー・コックス)からロンドン随一の宝飾店街“ハットンガーデン”での大掛かりな窃盗計画を持ちかけられたブライアンは、テリー(ジム・ブロードベント)、ケニー(トム・コートネイ)、ダニー(レイ・ウィンストン)、カール(ポール・ホワイトハウス)ら、かつての悪友たちを集め、平均年齢60歳オーバーの窃盗団を結成。

ところが綿密な計画のもと、いざ実行日を迎えようとしたとき、ブライアンは突然計画から抜けると言い出す……。

評価は平凡だが、楽しみ方によっては沁みる

実は同作の評価は、映画批評サイトの「Rotten Tomatoes」を見ると、批評家支持率33%(2022年8月30日現在)と平凡なものに留まっている。

一流のキャスティングのわりに、という意見が主なのだが、しかし侮ってはいけない。たとえば、柿のフロマージュを食すのではなく、干し柿をしゃぶるような気持ちで視聴するのがおすすめだ。

ウィットに富んだジョークや皮肉を飛ばしあいながらも、年老いた弱さは隠しきれない、どこか愛すべき窃盗犯たちの織りなすドラマに注目しよう。

(すずき あゆみ)

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