環境に良いといわれる昆虫食ですが、やはりまだ抵抗がある人も多いでしょう。そんな人に朗報?の「ワンクッション挟む」実証実験が行われています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
昆虫飼料でマダイを養殖する
宇和海など養殖に適した環境に富み、マダイ養殖生産量日本一を誇る愛媛県。今この愛媛県で「昆虫」を飼料の原料として活用し、マダイを養殖する実証実験が始まっています。
この実験は、愛媛大学が地元の水産業者などと協力して実施しているもの。鳥の飼料として一般的な「ミールワーム」と呼ばれるゴミムシダマシ類甲虫の幼虫を約10%配合した飼料を使い、宇和島市の養殖場でマダイを養殖します。
当初は8000匹を育て、2023年の出荷を予定しています。なお、昆虫を原料とした飼料で魚介類の養殖を行う実証実験は、世界初とのことです。
昆虫を使うメリット
この実証実験に先駆けて実施した水槽内での実験では、昆虫飼料を与えたマダイは、従来の魚粉主体の飼料を与えたマダイよりも成長が早かったといいます。またこれに加え、マダイのストレスを抑えたり、免疫力を高めたりするといったメリットも期待できるとのことです。
今回の実験では飼料全体の50%を占める魚粉のうち、2割をミールワームで代替しています。さらに将来はこのミールワームも工場で量産していく予定となっています。
現状、養殖魚の資料に使われる魚粉は、イワシなどの天然魚が利用されており、その不漁などによって価格が高騰したり安定供給が難しくなるといったリスクがあります。これを昆虫に置き換えていくことによって、養殖飼料の安定確保にもつなげられるのです。
昆虫の活用はSDGsの極み
そもそも今「昆虫食」がSDGsの有望な政策として世界で注目されています。
昆虫を食料として用いるメリットは、魚や畜産動物と比べて、飼料のタンパク質変換効率が良いというもの。これは簡単に言うと、同じ量の餌を与えて育てた場合に、魚や畜産動物よりも昆虫のほうがより多くのタンパク質を作り出せる、ということです。
また昆虫は、イワシで育てる養殖魚と違い、野菜くずや雑草など「ヒトが食料として利用しないもの」で飼育することができます。加えて大量に養殖しても畜産動物のようにメタンガスを排出せず、環境への悪影響が少ないとされます。そもそも養殖に必要な設備も簡易的なものでよく、かかるコストも小さい、とメリットだらけです。
しかし昆虫食、あるいは昆虫養殖には、これらのメリットを補って余りあるだけの欠点があります。それはもちろん「虫を食材として認識したくない人が多い」というもの。
そのため、今回の実験が目指している「飼育した虫で魚を育て、その魚を食べる」という二段階養殖は、非常に理にかなったアイディアといえます。
今後、昆虫食や昆虫養殖が徐々に普及していく中で、昆虫飼料という選択肢もまた増えていくのではないかと思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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