昨年の日本選手権で47歳にして自己最高位の2位という成績をおさめた木澤大祐選手。トレーニングキャリアは30年。ケガに泣かされることなく進化を続ける木澤選手が、マッスルゲート川崎でのセミナーで明かしたバルクアップの方法論とは。今回は前半をお届けする。
木澤大祐選手に学ぶ「関節に優しく、筋肉にハード」なトレーニング法
◆「重量」か?「効かせる」か?
想像していただきたいのですが、「効かせるトレーニング」というものがありますよね。例えば10㎏で効かせてカールができる人と、30㎏でゆっくりと効かせてカールができる人では、どちらがすごいか。これはもう30㎏のほうです。つまり、そこを目指せばいいわけです。ただ、10㎏でずっとやり続けて、いずれ30㎏でできるようになるのかといえば、そうではありません。大きくチーティングを使って40㎏でできるようになれば、ゆっくりで20㎏ができるようになり、25 ㎏ができるようになり…と成長していきます。 ですから、トレーニングのアプローチとしては基本的には「重量を伸ばす」、そして「効かせる」、さらには最終目標として「より重いものをより効かせる」ということになります。だから、「効かせる」という感覚は大事で、その感覚も磨いていかないといけません。 その一方で、重量もしっかりと伸ばしていく必要があります。ですが重量だけを伸ばしていっても、効かせる感覚がうまくない方は、なかなか身体が変わっていかないと思います。なので、その両方をやっていきましょうということになります。 ただし、この両方を行うのは難しいです。これを1日のトレーニングの中で行うには、うまくバランスを考えてトレーニングメニューを組んでいく必要があります。僕の場合、例えば1日で6種目やるとします。最初の1、2種目目くらいは重量を伸ばすことに特化したトレーニングを行います。「重量8点、効かせる感覚2点」というイメージです。この場合の「効かせる2」は、「勝手に効いてしまっている」という感覚です。 最初の疲れていない段階では重たいものが持てるので、そういったトレーニングが向いています。そしてトレーニングが進むにつれて疲れてきたら、もちろんそうした中で可能な限り重たいものを扱ったほうがいいですが、「重量」と「効かせる」が次第に逆転していきます(図1)。いわゆる「パンプ系」とも言われる、回数の多いトレーニングです。
◆重量を伸ばすトレーニング
では、実際に重量を伸ばすにはどのようにすればいいか。大事なのは「目標」と「記録」の二つです。まずは記録をつけます。トレーニングノートは思い出を振り返る日記ではありません。次のトレーニングでどういった目標を立てるか、そのために書くものです。目標に関しては、必ず回数を決めたほうがいいと思います。例えば、ベンチプレス100㎏で「8回」と回数を決めたとします。そこからは9回以上も8回未満もやりません。しばらくの期間は8回が限界の重量(8RM)を伸ばして行きます。具体的に言えば、1セット目で8回、2セット目で7回できたとします。「8回」はクリアできたので、次のトレーニングでは102・5㎏で8回を目指します。なお、ここでは重量は落としません。4セット行うとしたら、4セット目まで同じ重量で行います(図2)。ここでやってはいけないのが、8回余裕でできたからといっていきなり105㎏に上げたりすることです。いきなり重量を上げて、5回や6回しかできなくなると、そこでつまづいてしまいます。ただプレートは2.5㎏刻みでしか上げられないですが、僕だったら本当は101㎏でセットしたいところです。 そして110㎏まで挙げられるようになったとして、そこで「7回」が3、4週ほど続いてしまったとします。すると、そこが「変えどき」になります。2、3週続けて記録が伸びなかったら、人間というのはそこで「もう限界かな」と思ってしまいます。すると、当たり前に出来ていた7回すら出来なくなることもあります。
そこで何を変えるのかと言うと、目標の回数を変えてあげます。次は5回狙いでやってみよう、などです。その5回が頭打ちになったら、今度は10回にして、次にまた8回に戻してみたり。 先ほど重量を伸ばすトレーニングでは「『2』は勝手に効いている」と言いましたが、なぜ効くのかというと、この回数域です。ベンチプレスを5回、8回、10回を何も考えずに行った際、胸はそれなりに張っていると思います。これが1回だけだったりすると、胸を使った感覚はほとんどないと思います。ボディメイクの場合は5回から10回ぐらい。その回数域で重量を伸ばしていけば「2」くらいは効いて感覚が残ると思います。 ただし、40代以上の方は「5回」というのは避けたほうがいいかもしれません。ケガの防止という観点から言えば8回から10回ほどの重量を伸ばしていくのがいいでしょう。 あともうひとつ気を付けなければいけないのが、「条件を変えない」ということです。つまり可動域です。例えばスクワットで1レップ目は深くしゃがんでいたのに、最後の8レップ目は浅くなっているというのではいけません。ちゃんと最後の8レップ目まで同じ深さでやるようにしていただきたいです。 スクワットは重量を伸ばすのに非常に向いている種目なのですが、僕はセーフティーバーを活用しています。もちろん安全のためにセットしているのですが、深さの基準にしたいからです。しゃがんだときのバーとセーフティーバーの間隔が指1、2本分くらい、ギリギリ当たらない高さにセットします。これが拳ひとつ分ほどの間隔だと、指1本分浅くなっても気づけません。スクワットは指1本分深くするだけで感覚が全く変わってきます。そういった面でもセーフティーバーを深さの基準にしてもらうのはいいと思います。 また、リズムも大切です。重たいものを持ったときは速く下ろしたくなるものです。ただし、重たい物を速く下ろすと、切り返しのときに重たく感じます。なので、ある程度筋肉に重さを感じながら下ろしたほうが切り返しがスムーズに行えます。 リズムとして僕がよく行っているのが「三拍子」。高重量ほど、ネガティブ動作を「1、2」、ポジティブ動作を「3」という三拍子のリズムを意識します。筋肉で重さを受けてレップを繰り返すかたちになり、関節に過剰な負荷がかからないので、ケガも減ります。 さらに今のジムにはたくさんのマシンがあります。重量を伸ばす種目もあえてフリーウエイトではやらずに、ケガを防止するためにマシンで行うのもいいと思います。そういったマシンで重量を伸ばしていけば、より確実にフォームを崩さずに重量を伸ばしていけると思います。
木澤大祐(キザワ ダイスケ)
1975年1月9日生まれ、愛知県名古屋市出身。身長170cm、体重82㎏(オン)、オフ(89㎏)医療廃棄物の回収という肉体労働をしながら大会出場を続けていたが、2017年2月にJURASSIC ACADEMYをオープン。2019年4月には独立してオーナーに。爆発的な筋量を誇り「ジュラシック木澤」「東海の恐竜」の異名で多くのファンを持つ。2020年7月7日からJURASSIC KIZAWACHANNEL(YouTube)を開設。登録者数4.6万人。一男二女の父。 主な戦績:1995年 日本ジュニア選手権優勝、2003年 ジャパンオープン選手権優勝、2008・2019年 日本選手権4位、2014・2015・2019年 日本クラス別選手権85㎏級優勝、2021年 日本選手権2位
文・藤本かずまさ/提供元・FITNESS LOVE
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