チーターは非常に速く走る動物として有名です。

こうした動物たちの動きは、ロボット科学者が高速で走るロボットを設計する際に役立つ場合があります。

そして最近、オーストラリアのヨハネス・ケプラー大学(Johannes Kepler University)に所属するグオヨン・マオ氏ら研究チームは、チーターよりも素早く動ける小型ソフトロボットを開発しました。

1秒間で体長の35倍の距離を走れるだけでなく、水中を泳ぐことも可能なのだとか。

研究の詳細は、2022年8月9日付の科学誌『Nature Communications』に掲載されました。

薄い体を曲げて走る小型ソフトロボット

チーターのように素材を曲げたり伸ばしたりして走る
Credit:Guoyong Mao(Johannes Kepler University)et al., Nature Communications(2022)

開発された小型ソフトロボットは、柔軟性のある素材が曲がったり伸びたりして前進するよう設計されています。

ちょうどチーターが地面を蹴って体を曲げたり伸ばしたりしながら走るときのようです。

しかし小型ロボットで素早い動作を実現させるためには、できるだけ軽量にし、消費エネルギーも小さくしなければいけません。

小型ロボットに一般的なモーターなどは積めないのです。

ソフトロボットの概念図。柔軟な素材にコイルを組み込み電流を流して動かす
Credit:Guoyong Mao(Johannes Kepler University)_Ultrafast small-scale soft electromagnetic robots(2022)

今回研究チームは、磁力を利用してソフトロボットを曲げたり伸ばしたりしています。

3Dプリンタを用いて、1枚の柔らかい素材に液体金属を渦巻き状に印刷します。

そして、この平面上のコイルに電流を流すことで磁界が発生。

磁石の床に置くことで相互に作用させ、電流のON・OFFで素材を任意に曲げたり伸ばしたりできるというわけです。

3Dプリンタでコイルをプリント。かぎ爪を付けて走りやすくしている
Credit:Guoyong Mao(Johannes Kepler University)et al., Nature Communications(2022)

もちろん、素材の伸縮だけでは効率よく前進できません。

そのため素材の両端には足となる「かぎ爪」が付いています。

床の形状によって走る速度は大きく異なりますが、凹凸のある荒い表面では非常に素早く動けるようになりました。