保険証の種類は主に3種類あり、その保険証には「記号」「番号」「保険者番号」の3種類の番号が記載されている。保険証にある番号によって、勤務先企業や保険の種類などさまざまな情報を知ることができるのだ。保険証の番号や記号などから読み取れることを解説していこう。

公的医療保険とは?保険診療と費用負担の仕組みを解説

日本では国民皆保険制度のもと、原則としてすべての国民がなんらかの公的医療保険(健康保険)への加入が義務づけられている。国民が比較的安い医療費で適切な医療を受けられるのは、公的医療保険が病気やケガの治療にかかる費用の大部分を補てんしているからだ。

医療費の約40%は税金でまかなわれている

公的医療保険は、みんなでお金を出し合い、困っている人を支える「相互扶助」を基本とした制度だ。医療費の約50%が加入者と雇用主の支払う保険料や掛金、約40%が国の税金、残り約10%が患者の自己負担分でまかなわれている。

公的医療保険の保険料や掛金は所得に応じて、患者の自己負担分は所得や年齢に応じて決まる。税金の負担に加え、所得の多い人や現役世代がより多く負担することにより、所得の低い人や高齢者でも医療を受けやすい仕組みになっている。

保険証があれば全国一律のサービスが受けられる

保険証は公的医療保険に加入している証明であり、保険証を提示すれば全国どの保険医療機関でも同じ負担割合で保険診療を受けられる。自己負担分を超える医療費は医療機関が審査支払機関に請求するため、患者自身は自己負担分のみを窓口で支払えばいい。

保険診療と費用負担の流れ

保険診療とその費用負担の流れは下図の通りだ。流れは加入している医療保険制度(医療保険者)にかかわらず共通だ。

※筆者作成、2020年4月時点

・保険医療機関……病院・診療所・調剤薬局
保険診療を行った保健医療機関は、診療報酬点数表に基づいて医療費を計算し、自己負担分を患者に、残りの費用は審査支払機関を通し1ヵ月分をまとめて医療保険者に請求する。

・審査支払機関……社会保険診療報酬支払基金
審査支払機関とは、保険医療機関から医療保険者への医療費の請求が正しいかを審査し、医療保険者から支払われた医療費を保険医療機関へ支払う役割を担う機関のことだ。厚生労働大臣から認可を受けた「社会保険診療報酬支払基金」が担っている

・医療保険者……市町村・協会けんぽ・健康保険組合など
医療保険者とは健康保険を運営する機関のことだ。被保険者から保険料や掛金を徴収し保険給付を行う。医療保険機関から請求された医療費は審査支払機関で審査され、問題がなければ医療保険者から審査支払機関を介して医療保険機関に支払われる。

社会保険なら「協会けんぽ」や「健康保険組合」、国民健康保険であれば「市町村」や「国保組合」、後期高齢者医療制度であれば「後期高齢者医療広域連合」が保険者になる。保険証は保険者ごとに発行される。

保険証は大きく分けて3種類ある

主な公的医療保険(保険証)には以下の3種類がある。

(1)国民健康保険……自営業者、非正規雇用者などとその家族が加入

国民健康保険(国保)は、自営業者や年金生活者、非正規雇用者などと、その家族が加入する医療保険制度だ。国民健康保険には「市町村国保」と「国保組合」がある。

・市町村国保
市町村と都道府県が運営し、その地域に住む被用者保険加入者および国保組合加入者以外の人が加入する。

・国保組合
原則として個人事業所を対象に、同種の事業や業務に従事する人とその家族が加入できる。例えば開業医などが加入する「医師国保」、土木建築業者が加入する「全国土木建築国保」などがある。

⑵社会保険……会社員や公務員、教職員とその家族が加入

社会保険は、会社員、公務員、教職員とその家族が加入する医療保険制度だ。社会保険はさらに、勤め先によって以下の3種類に分かれている。

・協会けんぽ
協会けんぽは、主に中小企業に勤める会社員とその扶養家族が加入する医療保険制度だ。健康保険法に基づいて全国健康保険協会が運営している。全国健康保険協会は、船員として雇用され働く人が加入する「船員保険」も運営している。

・組合健保
組合健保(組合管掌健康保険)は、主に大企業に勤める会社員とその扶養家族が加入する医療保険制度だ。健康保険法に基づいて企業が単独、または同業他社と共同で設立した健康保険組合が運営している。

・共済組合
共済組合は公務員や私立学校の教職員が加入する医療保険制度だ。共済各法に基づき共済組合等が運営している。共済組合は国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済の3つに分類される。

⑶後期高齢者医療制度……75歳以上のすべての人が加入

75歳になるとすべての人がこれまでに加入していた公的医療保険制度から脱退し、「後期高齢者医療制度」に移行する。後期高齢者医療制度は都道府県単位で設けられた広域連合が運営している。

75歳未満であっても、65歳以上で寝たきりなど一定の障害があると広域連合に認定された人は、後期高齢者医療制度の被保険者となる。本人の意思で被保険者とならないこともできる。

これまで他の公的医療保険制度の被扶養者であった人は、75歳となる時点で扶養から外れるため手続きが必要になる。

保険証の種類によって受けられる保障が違う

保険証の種類によって、受けられる保障にも違いがある。下の表に医療保険制度による保障内容の違いをまとめた。
 

医療保険制度
からの給付
国民健康保険 社会保険 後期高齢者
医療制度
市町村国保 国保組合 協会けんぽ 組合健保 共済組合
療養給付
入院時食事療養費
入院時生活療養費
高額療養費
出産育児一時金 ×
埋葬料(葬祭費)
傷病手当金 ×(任意) △(任意) ×(任意)
出産手当金 ×(任意) △(任意) ×
※○…給付あり △…加入する制度による ×…給付なし
※筆者作成

市町村国保には「傷病手当金」「出産手当金」の給付がない

国民健康保険では「傷病手当金」「出産手当金」は任意給付となっている。2019年10月時点で給付を行っている市町村国保はなく、国保組合では組合によって給付される組合とされない組合がある。

市町村国保には扶養の仕組みがない

市町村国保には「扶養」の仕組みがない。世帯全員のそれぞれが被保険者となり、家族の人数によって保険料も変わる。一方、扶養の仕組みがある国保組合や社会保険では、扶養家族の人数で保険料は変わらない。

組合健保では高額療養費に上乗せ給付を行う組合もある

組合健保では、高額療養費に独自の付加給付がある組合もある。付加給付の内容としては、2万円など一定の基準額を超えた金額が後日支給されるのが一般的だ。

通常の高額療養費であれば、医療費が高額となった場合に自己負担限度額を超える金額が還付される。

例えば1ヵ月に医療費が100万円(高額療養費適用前の自己負担額30万円)かかった場合、標準報酬月額28万円~50万円の人であれば、高額療養費として21万2,570円が支給され、自己負担額は8万7,430円になる。

付加給付を行う組合健保に加入していれば、基準額を超える部分の金額についても保障され、1ヵ月の医療費は基準額までに抑えられる。

(※ホンダ健康保険組合のホームページをもとに作成)

保険証の「記号」「番号」「保険者番号」とは?読み方を解説

保険証には、被保険者の氏名や生年月日、性別などのほか、「記号」「番号」「保険者番号」という3種類の番号が記載されている。

保険者ごとに付番される「記号」

保険証に記載されている「記号」は事業者ごとに付番されるもので、「事業所整理記号」と呼ばれることもある。国民健康保険に加入している場合は地方公共団体を示す番号が、社会保険に加入している場合は勤務先の企業などを示す番号が記載される。

被保険者に付番される「番号」

保険証の「記号」の隣に記載されている「番号」は、保険者の管轄内における整理番号を示し、「被保険者整理番号」と呼ばれることもある。この番号は1から始まり、企業の場合は退職者も含めて社会保険への加入手続きをした順に振られていく。

またこの番号は被保険者ごとに振られるものであるため、配偶者や子供といった被扶養者にも、被保険者と同じ番号が振られることになる。

保険証の下部に記載されている「保険者番号」

「保険者番号」は、2桁の法別番号・2桁の都道府県番号・3桁の保険者別番号・1桁の検証番号からなる、8桁の数字で構成されている。なお、国民健康保険には法別番号がないため6桁の数字で構成されている。

これらの番号は適当に決められるのではなく、厚生労働省が定めるルールに従い割り振られている。

保険証の保険者番号を見ると保険の種類や勤務先がわかる

保険証の下部に記載されている保険者番号から勤務先(勤務形態)や保険の種類がわかる。

保険者番号の最初の2桁から勤務先が推測できる

保険者番号の最初の2桁は医療保険制度の区分を示す「法別番号」で、この番号から勤務先のおおよその見当がつく。各医療保険制度に対する法別番号の割当と、番号から推定される勤務先(勤務形態)の具体例を挙げると以下のようになる。

  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)……「01」→中小企業の従業員

    船員保険……「02」→船員

  • 日雇特例被保険者の保険……「03または04」→日雇労働者
  • 組合管掌健康保険……「06」→大企業の従業員
  • 国家公務員共済組合……「31」→国家公務員
  • 地方公務員共済組合……「32」→地方公務員
  • 警察共済組合……「33」→警察職員
  • 公立学校共済組合/日本私立学校振興・共済事業団……「34」→教職員
  • 後期高齢者医療制度……「39」→後期高齢者
  • 特定健康保険組合/特定共済組合……「63、72~75」→75歳未満の定年退職者

保険者番号が6桁なら国民健康保険、8桁なら社会保険

前述のように国民健康保険には法別番号がなく、保険者番号は6桁の数字で構成されている。そのため保険者番号を見れば、その人が加入しているのが社会保険なのか国民健康保険なのか、保険証の種類についても見分けることができる。

保険証の番号(被保険者整理番号)から勤務先での地位がわかることも

保険証の上部、「記号」の右横に記載されている「番号(被保険者整理番号)」は、退職者も含め、社会保険への加入手続きをした順に番号が割り振られる。そのためこの番号を見れば、その人の社内におけるおおよその地位を推測できる。

たとえば保険証に記載されている被保険者整理番号が「1」であった場合、その人は会社のトップである可能性が高い。また、法別番号が06で比較的若い被保険者整理番号である場合、その人は大企業の役員クラスに位置する、あるいは位置していた可能性が高くなる。

また被保険者整理番号は、社会保険に加入した順、つまり、入社順に割り振られることが多いため、この番号を見ることでその人の入社時期が早いか遅いかをある程度予想できる。

保険証の種類や保険者番号などを確認してみるとおもしろい

自分がどういう健康保険に加入しているのか、あらためて保険証を確認してみよう。保険証の種類や「記号」「番号」「保険者番号」の読み方を知っていると話のネタにもなるはずだ。 

文・竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)
 

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