全国の漁港で水揚げされた魚を、スマートフォンを使って仕入れられるアプリが「UUUO(ウーオ)」だ。従来のリアルな商談では難しかった、水揚げ日や鮮魚の状態も簡単に確認できるほか、新たな産地も容易に開拓可能な利便性が受け、利用する食品スーパー(SM)企業が増えている。

買参権を取得し、知見重ねる

めざすは水産業界のAmazon、鮮魚部門に変革を
(画像=株式会社ウーオマーケティングチーム石岡 直也 氏(写真左)
株式会社ウーオセールスチーム澤田 剛 氏(写真右)、『DCSオンライン』より引用)

鮮魚発注アプリ「UUUO」を開発・提供するのは、IT企業のウーオ(広島県)。鳥取県の海近くで生まれ育った社長の板倉一智氏が、帰省のたびに衰退している地元水産業の現状を目の当たりにし、「何とか再生したい」との思いで2016年に起業した。

2018年以降、鳥取県の賀露港、網代港で順次、買参権を取得。水産業の現状や課題などを把握し、知見を重ねるところから活動を開始した。

その一環として、実際に競りに参加し、魚の買い付けを行っていたのが、現在、営業を担当する澤田剛氏。前職は、海外支店での駐在経験もある金融マン。「無類の魚好き」で、同社の取り組みに賛同しメンバーの一員となった。

「従来の水産流通の問題点は、いつ、どこで、何が、どれぐらい水揚げされているかを網羅的に知る、データプラットフォームが存在しなかったこと」と澤田氏は指摘する。そのためSMの仕入れ担当者は産地を手軽に比較できなかった。また、中央卸売市場の実績を優先させるため、取引が固定化しやすい傾向にあった。連絡の手法も電話やLINEを通じてで、一対一のコミュニケーションが中心だった。

これらを解消したのが「UUUO」だ。それまで発注機能、情報提供機能を備えていた別々のアプリを統合し、2020年9月にリリースした。同時に、情報提供元の産地を開拓。これまでに北海道から九州まで100超の漁港との提携を進めてきた。

めざすは水産業界のAmazon、鮮魚部門に変革を
(画像=鳥取県で買参権を取得、仕入れを行うなど地道な活動を通じて、水産業界の現状と問題点を把握していった、『DCSオンライン』より引用)

かつて本を買うには、近くで書店巡りをするのが普通だった。つまりどこに何があるかの情報がなかったためだ。だがAmazonの登場で、書店巡りをしなくても、在庫のあるところから買えるようになった。

マーケティングチームの石岡直也氏は、「われわれがめざしているのは、水産業界のAmazon」と語る。

全国各地の鮮魚を3ステップで簡単仕入れ

めざすは水産業界のAmazon、鮮魚部門に変革を
(画像=アプリの画面には、全国の産地からアップされる鮮魚の写真が並ぶ、『DCSオンライン』より引用)

「UUUO」を使うと、全国各地の鮮魚を簡単に仕入れられる。かかる手間は、産地からアップされる「写真を見て」「数量を決め」「決定する」という、わずか3ステップだけだ。

仕入れの判断基準になる情報も充実。産地や魚種、サイズといった基本データのほか、「漁法」「締め方」「水揚げ日」といった、従来の卸売市場経由の仕入れでは得にくかった内容も把握できる。

たとえば漁法は、底引網や定置網、また竿釣りなど、具体的な手法が示される。竿釣りの場合、少し価格は高くなるが鮮度がよい。そのため「刺身で提供すれば喜ばれる」と、売り方を想定した仕入れも可能になる。

アプリのリリース後も徐々に新機能を付加している。今年4月には「商品評価機能」を追加した。いわばAmazonのレビューで、実際に仕入れた商品や出品者についてのコメントを読むことや、書き込むことができるようになった。

こうしたユーザビリティの向上も背景に、SMのほか、飲食店の仕入れ担当者などユーザーが着実に増えている。

「産地にとっては、ウーオの仕組みに参画することで、販路拡大しやすく、魚価の向上につながります」と石岡氏は力を込める。同社では今後もサービスを強化、日本の水産業振興につなげたい考えだ。

提供元・DCSオンライン

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