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2I/ボリソフの軌道 / Credit: NASA/JPL-Caltech


Point

■史上2番目の恒星間彗星「2I/ボリソフ」が飛来して来る前にいた太陽系外の環境が、私たちの太陽系に似ている可能性が浮上

■2I/ボリソフが排出するちりの組成や周辺のガスが、私たちの太陽系の彗星と類似


オウムアムアに続き、今年8月末に発見されたばかりの史上2番目の恒星間彗星「2I/ボリソフ」。現在、世界各地が調査にかかっています。

複数の観測結果から、2I/ボリソフが飛来して来る前にいた太陽系外の環境が、私たちの太陽系に似ている可能性が浮上してきました。

ちりもガスもそっくり!?

その名前は、発見したアマチュア天文学者ゲナデイ・ボリソフ氏に因んでいます。自作の望遠鏡を使ってクリミアで観測を行っていたところ、この恒星間彗星を発見しました。

太陽系外から飛来した天体がわずか2年間で2つもあるなんて、かなりスゴいことです。近いうちに別の恒星間彗星も飛来してくるのではないかと、天文学者たちは気が気でありません。

Credit: Wikimedia Commons/Lefty7283

カナリア天体物理研究所が先月発表した論文では、2I/ボリソフが排出するちりの組成が、私たちの太陽系を起源とする彗星が排出するちりに近いことが示されました。

また、クイーンズ大学ベルファストの研究チームによる別の査読前の論文は、この恒星間彗星を取り巻くガスが、私たちの太陽系を行き交う彗星のガスと類似していることを説いています。しかも、ガスの量や、ちりの粒の量も、非常に近いのだとか。

限られた時間の中でできるだけ追跡したい

2I/ボリソフの故郷が私たちの故郷に近い環境なのか、それとも異なる環境なのかを、現時点で断言することができませんが、いずれにしても、天文学者を興奮させるニュースであることには違いありません。

クイーンズ大学ベルファストのミシェル・バニスター氏は、「2I/ボリソフが、私たちの太陽系に存在するものに似ているとのだとしたら、私たちの周囲で起きているプロセスは、私たちが考える以上に典型的なものだということになります」と語っています。

反対に、2I/ボリソフが太陽系の彗星とは異なる性質を持つ場合、それは、その化学プロセスが太陽系外システムの多様性の中で、私たちの想像とはまったく異なるやり方で起きているということを意味します。

史上2番目の恒星間天体「2I/ボリソフ」の故郷は太陽系とそっくり?
(画像=Credit: pixabay、『ナゾロジー』より 引用)

2I/ボリソフが太陽に最接近するのは2019年12月7日頃。その後は、再び遠ざかり、永遠に戻って来ません。

二度と相まみえることのない珍しい天体の正体を少しでも解明すべく、天文学者たちは厳しい時間制限の中、調査を進めているところです。

reference: scientificamerican, futurism / written by まりえってぃ

提供元・ナゾロジー

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