海の底に落ちていたのは、ポンポンではありませんでした。

米モントレー湾水族館研究所(MBARI)はこのほど、メキシコ北西部・カリフォルニア湾での深海探査にて、赤いポンポンのようなものが海底に転がっているのを発見。

回収後にDNA解析をした結果、ポンポンのような物体は、新種の海洋生物であることが判明しました。

一体、どんな生物なのでしょうか?

目次

  1. 海底をゆっくり歩いて、マリンスノーを拾い食いしていた

海底をゆっくり歩いて、マリンスノーを拾い食いしていた

今回の新種生物は、ROV(Remotely operated vehicle、遠隔操作型の無人潜水機)を用いた深海探査により発見されました。

MBARIは過去に、6100回を超えるROV探査を行っています。

新たに見つかったのは、海洋多毛類として知られる「ビレミス(Biremis)」という生物です。

ビレミスは、フサゴカイ科 (Terebellidae))に分類される多毛類の一種で、フサゴカイ全体としては、世界各地で約400種が報告されています。

ビレミスは餌を食べるための触手をたくさん持っているのが特徴で、その見た目からアメリカでは「スパゲッティ・ワーム(spaghetti worm)」と呼ばれています。

こちらが、ROVで撮影された新種ビレミスの映像です。

一方で、ビレミスはこれまで、大西洋側のバハマ諸島にしか生息していないことが知られていました。

しかし、新たなビレミスは、太平洋側にあるカリフォルニア湾の水深2000メートル付近で見つかっています。

まるでポンポンみたいな「新種の深海生物」を発見!
(画像=水色のハイライト部分が「カリフォルニア湾」 / Credit: ja.wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

この生物には、目も鰓(えら)もなく、全身がイソギンチャクのような赤い触手に覆われています。

また、フサゴカイに属する多くの種が、海底にチューブ型の巣穴を掘って身を隠すのに対し、このビレミスは、海底に横たわったまま、ゆっくりと移動していました。

移動することにより、海底に散らばっているマリンスノー(Marine snow)を触手で拾い集めて、食べているようです。

マリンスノーとは、表層から深層へと降り注ぐ有機物のことで、その様子が粉雪のように見えることから、この名前が付けられました。

主な成分は、海洋生物やプランクトンの死骸や糞便などからできています。

まるでポンポンみたいな「新種の深海生物」を発見!
(画像=海底に落ちていくマリンスノー / Credit: ja.wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

研究チームは、このようなビレミスを以前に見かけたことがなかったため、回収後に米スクリップス海洋研究所(SIO)にDNA検査を依頼。

その結果、学問的に記載されていない新種のビレミスと判明したのです。

しかしチームは、慎重を期すために、今後さらなる標本個体を採取し、遺伝子や生態および形態学を明らかにしたのち、正式な学名を付ける予定です。

MBARIは過去35年間の調査で、240種以上の新種の深海生物を発見してきました。

深海の世界は、その大部分が未知のヴェールに包まれており、それに比べると、火星表面の方がまだ分かっていることが多いと言われています。

ですから、深海で新種が見つかることは何ら珍しいことではなく、今も多くの生物が私たちに見つけられるのを待っているのです。

提供元・ナゾロジー

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