栄養のための知識がないことで損をしている方はたくさんいます。栄養を工夫すればもっと効率的にボディメイクが実現できます。今回も、サプリメントの開発者で、栄養の専門家の桑原さんに「栄養バランスをあえて“崩す”テクニック」について教えてもらいました。
ダイエットのウソ・ホント
栄養バランスはきちんと守らないといけない?
桑原 プロテインは、高タンパク・低脂質の究極の食品です。また通常のプロテインサプリメントにはビタミンやミネラルが添加されています。手軽に栄養バランスを整えるにはうってつけです。僕はスポーツ選手にも「プロテインは絶対に朝飲め!」と言っています。もちろんプロテインを食事の代わりにするのは良くありません。食事1回分をまるまるサプリメントに置き換えるダイエット法がありますが、1食抜くという行為は身体への負担が大きいので注意しましょう。
————あくまでも3食の食事が基本ということですね?
桑原 そうなりますね。ただし、これにも続きがあって、個人的には、肩肘張ってまで基本を守ることはないと考えています。
————思い切った発言ですね。
桑原 時間が無くてどうしても食べられないときは食べられないし、好きじゃないものを無理して食べたくもないでしょ?食べるって本当は楽しいことのはずなのに、特別な努力が必要になるぐらいなら、「サプリを活用すればいいじゃん」と割り切ってしまうのも手ですよ。実を言うと、僕はサラダがあまり好きじゃないんです(笑)。そんな自分でも健康を損ねないようにとの思いで開発したのが「エキストラビタミン&ミネラル」というサプリメントです。こんな動機で作っていると知った周りのスタッフたちからは猛反発をくらいました。「健康食品を扱う人がそんな考え方をして!」と栄養士の人とか怒るわけ。僕も「じゃあ何が足りないの?」「このサプリメントに足りないものがあったら教えてよ」と引き下がらなかった(笑)。結局、皆の体内ビタミン量を測ってみたところ、ダントツで僕のが高かったんです。もちろんサプリメントが万能ではないのは僕も十分に理解しているけど、でも微量栄養素は絶対食事から摂らなくちゃいけないというわけじゃない。むしろ、“どうやって崩していくか”、どこまで崩してOKなのかを知ることがポイントになります。美しさやカッコ良さを求める場合は特にそうですね。
————健康を求めるのと、美しさを求めるのとでは、基準がいろいろろ異なってくるのでしょうか。
桑原 異なりますね。痩せすぎた身体を美しいと考える風潮はどうかと思いますが、そこまで極端じゃなく、ほど良いシェイプを目指す場合でも。やっぱり健康を目指すときの基準とは違ってきます。例えば、健康の基準を守っていたら、腹筋が割れることはありません。結局、「程度問題」なんですよね。健康の基準から離れ過ぎたら、それこそ本当に不健康になってしまうけれど、律儀に守っていても、カッコ良くなれません。要はどうやって崩すかです。
栄養バランスをあえて“崩す”テクニック
————“崩す”際の基本的な考え方を教えてください。
桑原 ベースになるのは、PFCバランスですね。Pはタンパク質、Fは脂質、Cは炭水化物を示しています。 日本人の場合は、P:15%、F:25%、C:60%ぐらいのバランスが良いとされています。これをどう崩していくかに工夫が必要です。
————Cの比重を低くする「低炭水化物ダイエット」がポピュラーだと思いますが、これも崩し方のひとつでしょうか。
桑原 そう言えますね。ただし、農耕民族の日本人の食事は長年炭水化物を種としてきましたから、これを突然減らすのは体質に合わないことが多いようです。脂質を抑えることが一般的ですね。問題は、健康に影響しない範囲でどう崩すかですね。
1.低脂質、高タンパク
————脂質を抑えると、全体のバランスはどうする?
桑原 PFCバランスを直感的に程よく変える良いやり方があるのでご紹介いたします。まず、「Pは量で固定せよ」。
————タンパク質の量は変えないということですね。
桑原 その通りです。食事制限をするときでも、タンパク質の量は減らさないでおこうということです。全体の摂取量は減っているのに、タンパク質の量は同じ、つまり、割合としては、高タンパク質の食事になります。 次に、「Cの率は維持する」。全体の摂取量を減らしていれば、それの応じて炭水化物の量も減らしていきますが、60%なら60%という比率は維持しましょうということです。このようにすると、当然しわ寄せが「F」に来るわけです。結果、低脂質で高タンパク、そして程よい炭水化物というバランスになります。 これが最初の崩し方です。
————最初ということは、続きがあるということでしょうか。
2.身体が慣れ始めたら刺激を変える
桑原 同じ崩し方を続けていると身体が順応し、反応しなくなってきます。そうなったときは、先ほどの話に出てきた“低炭水化物”の出番です。タイミングよく刺激を変えてあげるんです。低脂質で反応が鈍くなってきた身体も低炭水化物の新しい刺激によって反応が再開するでしょう。
————低炭水化物が有効な場合もあるんですね。
桑原 使い方次第です。よく、低炭水化物による減量を始めたときに、これまでの習慣で脂質も抑えてしまう人がいます。炭水化物も脂質も摂っていないのですから、当然最初はものすごく体重が減りますよ。でも、これだと確実にリバウンドします。炭水化物を減らすときは、脂質を適量摂るようにしないと上手くいきません。これがなかなか難しいんですよね。それまで、脂質=悪みたいな考え方になっているで?急に脂質を摂れと言われても勇気がいりますよ。
————刺激を変えるときは思い切りが必要ですね。
桑原 そうです。メリハリが大切です。他にも、刺激を変える方法として、チートデイというのがあります。普段からカロリーや脂質を抑えていると、身体が省エネモードになり、反応が鈍くなってくるので、1週間に1度くらいは好きなものを食べていい日をつくります。
————反対に、何も食べない「断食ダイエット」についてはどう思いますか?
桑原 逆チートデイとして、週に1度食べない日を作るのも有効です。せっかく断食するなら、デトックス効果も狙い、有害なものを排泄しましょう。
————注意することはありますか?
桑原 急にやらないことです。朝から少しずつ栄養摂取を減らしていって、完全な断食タイムは夕方から翌朝まで。これでも十分に効果は出るし、これ以上やったら身体への負担が心配です。そして断食はアフターケアが大切です。減量明けのボクサーなどは、急に冷水を飲んで胃痛を起こしたりすることがあります。朝は重湯から始めて、徐々に食事量を増やしていきましょう。徹底するなら、2~3時間かけて常温のスポーツドリンク入りセリードリンクを飲むぐらいの慎重さがあってもいいぐらいです。
文_Masayuki Saitoh 写真_Shojiro Kameike
提供元・FITNESS LOVE
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