オーストラリアの研究開発会社「Cyclo Tech」は10月12日、youtubeチャンネルに新しい垂直離着陸機(VTOL機)の動画を投稿しました。
スポーツカーのような見た目の新VTOL機は従来のプロペラ機とは異なり、タイヤのように回転するローターで空を飛ぶとのこと。
卓越した俊敏性と空中制御が可能になった未来のVTOL機の実現が近づいています。
目次
独自の推進システム「サイクロジャイロ」
垂直離着陸機(VTOL機)とは、滑走なしで垂直方向に離着陸できる航空機のことです。

従来のVTOL機には垂直方向にジェットエンジンやプロペラが取り付けられており、これにより垂直方向への推力を作り出していました。
しかし、2004年に設立されたCyclo Tech社は、15年以上かけて新しい推力システム「サイクロジャイロ(Cyclogyro)」を開発してきました。

このサイクロジャイロには1850年代まで活躍した外輪船と似た推進システムが採用されています。ただし、外輪船が水面を進むのに対し、サイクロジャイロは空中の自由移動を可能にするのです。
ローターの中心軸の周りには複数のブレードがあり、ローターが回転することで推力を生成。
ブレードの角度は継続的に変化するようになっており、推力は前方、後方、上下と任意の方向に瞬時に調整可能だと言われています。
さらにサイクロジャイロはコンパクトで効率が良いため、長期飛行にも適しているとのこと。
この技術に関する複数の特許は以前から取得されており、調整が続けられてきました。
スポーツカーのような新VTOL機のデモンストレーションがもうすぐ!?

2020年9月、Cyclo Tech社はサイクロジャイロについて「完全に軽量・最適化され、すべての性能および耐久テストに合格しました。フライトデモンストレーターに統合する準備ができています」と報告。
そして10月12日にはyoutubeチャンネルの動画にて、サイクロジャイロを4か所に装備したデモンストレーション用の新VTOL機を紹介しました。
機体の四隅に装着されたサイクロジャイロがタイヤホイールのように見えますね。そのためデモンストレーターの姿は、航空機というよりもスポーツカーやミニ四駆を彷彿とさせます。
各ホイールは独立して制御されるため、瞬時に出力が変化し、飛行機やヘリコプターと比較しても安定した飛行が可能とのこと。
実現するなら、私たちが夢想してきた「空飛ぶクルマ」に最も近いかたちになるかもしれませんね。

さて、このデモンストレーターは約80kgであり、2020年の終わりまでには飛行テストが行われる予定です。
結果によっては未来のVTOL機の実現が大きく近づいたことにになるでしょう。デモンストレーションの成功に期待したいものです。
提供元・ナゾロジー
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