「夜眠るときにいろいろネガティブな感情が浮かんでくる」ことに共感する人は多いかもしれません。
アメリカ・ハーバード大学(Harvard University)に所属する神経学者エリザベス・クレマン氏ら研究チームは、この原因について1つの仮説を提唱しています。
「身体だけでなく心にも24時間周期の概日リズムがあり、これによって真夜中以降は、行動や感情がネガティブな影響を受けやすい」というのです。
彼らは、仮説の根拠となりえる「夜間には自殺リスクと薬物乱用者が急増する」という研究結果について解説しています。
この仮説の説明は、2022年3月3日付の学術誌『Frontiers in Network Psychology』にて発表されました。
「心にも概日リズムが影響する」という仮説
「概日リズム」とは、環境の変化に関係なく、約24時間周期で変動する生理現象を指します。
これは一般的には体内時計とも呼ばれており、私たちが1日周期で目覚めたり眠たくなったりするのも、この作用が関係しています。
毎日決まった時刻にさまざまなホルモンが分泌されることで、体のリズムが生まれているのです。
クレマン氏ら研究チームは、この概日リズムの作用が、心や活動にも大きな影響を与えると主張しています。

そして「深夜にネガティブになる傾向」と概日リズムを結び付けた、「Mind After Midnight(真夜中過ぎの心)」と呼ばれる仮説を提唱しました。
私たちは昼間よりも深夜にネガティブになりやすく、夜遅くまで起きていることで、問題行動を起こしやすい、というのです。
確かに多くの人は、眠れない夜に昼間のさわやかな気分からは想像もできないほどネガティブな気持ちになることがあります。
ふと将来に対する不安が大きくなって涙が流れたり、自分の発言を後悔したり、最近投げつけられた暴言を思い出して何度も反芻したりするのです。
また体に悪いと分かっていながら、タバコを吸うことや暴飲暴食することに対する欲求を抑えられなくなる人もいるでしょう。
そして研究チームは、これまでに行われてきたいくつかの研究結果を、今回の仮説の根拠として挙げています。
昼間と比べて夜中には、自殺と薬物乱用が起きやすいのです。