カリフラワーの一種であるロマネスコは、緑のつぼみがフラクタルになっている野菜です。
フランス国立科学研究センター(CNRS)に所属するフランソワ・パーシー氏ら研究チームは、10年以上の研究の末、ロマネスコがフラクタル構造になるメカニズムを解明しました。
論文によると、ロマネスコのつぼみが一時的に「開花したつもり」になっていることが原因とのこと。
偽りの開花の「記憶」をロマネスコは持ち無限増殖を引き起こしていたのです。
研究の詳細は、7月9日付の科学誌『Science』に掲載されました。
目次
ロマネスコ・カリフラワーは自然界に見られるフラクタル
ロマネスコのフラクタルは偽の開花の「記憶」と成長速度が原因だった
ロマネスコ・カリフラワーは自然界に見られるフラクタル
フラクタルとは、部分と全体とが同じ形から成り立っている図形のことです。
三角形の中に三角形が無限に作られる「シェルピンスキーのギャスケット」などが有名でしょう。
どれだけ拡大しても延々と同じ画像が無限ループするという不思議な動画も、フラクタルの理論によって作られています。
ネットで出回っている下のようなGIF画像が、その代表例です。
ずっと見ていると目が回ってしまいますが、このフラクタルは自然界にも存在します。
氷の結晶や木の枝などがその例です。
そして植物のフラクタルで最も有名なのが「ロマネスコ」です。
多くの植物は、茎の頂点にはつぼみができ、いずれ花を咲かせます。
ところがロマネスコはつぼみが成長しきる前に、別のつぼみがどんどん生まれてきます。
つぼみの発生が短期間で何度も繰り返されることでフラクタルとなり、複数の円錐形が集まったように見えるのです。
ではどうしてロマネスコだけが、このような異常増殖を繰り返し、フラクタルを形成するのでしょうか?
研究チームはカリフラワーに似た構造をもつ別の植物を遺伝子操作し、強制的にロマネスコのようなフラクタルを生み出すことで、原因となるメカニズムを特定しました。
ロマネスコのフラクタルは偽の開花の「記憶」と成長速度が原因だった
遺伝子操作されたのはシロイヌナズナという白い花びらをもつ植物です。
外見はロマネスコと全く似ていませんが、遺伝子を改変することでロマネスコに似た形状になります。
具体的にはAP1/CALという遺伝子を変異させることで、シロイヌナズナをフラクタル化させることに成功しました。
研究よると、通常の植物はつぼみが開花したときに開花した「記憶」のような情報をもちます。
ところがロマネスコにある特殊な遺伝子は、つぼみの段階で偽の「開花状態の記憶」を与えるようです。
この偽の記憶は成長プロセスにいわばバグを引き起こし、つぼみを開花させるのではなく、別のつぼみを生み出そうとします。
新しく生まれたつぼみにもこの偽の「記憶」が備わっているため、延々と同じプロセスが繰り返えされることに。
つまり偽りの「記憶」がつぼみを無限増殖させるのです。
さらに、他のカリフラワーの芽の成長速度が一定であるのに対し、ロマネスコの芽の成長速度はとても速いと判明。
この成長加速と偽の「記憶」によるつぼみの無限増殖がフラクタルを生み出していました。
研究チームは、「フラクタル化の秘密がすべて解明されたわけではない」と述べており、さらなる研究の必要性を強調しています。
しかし将来的には、遺伝子操作によって他のいろんな植物をフラクタル化させることも可能かもしれませんね。
参考文献
ALIEN-LIKE VEGETABLES HAVE MATHEMATICAL “MEMORY” — STUDY
元論文
Cauliflower fractal forms arise from perturbations of floral gene networks
提供元・ナゾロジー
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