アメリカ・ニュージャージー州に住んでいる22歳の男性ジョー・ディメオ氏は、自動車事故の火傷が原因で、顔面と両腕をひどく損傷しました。
そのため2020年8月に特殊医療チームのもとで、移植の世界でも非常に珍しいとされている「顔面と両腕の同時移植」を受けることに。
手術は大成功し、現在ディメオ氏はリハビリに励んでいます。
目次
自動車事故からの大やけど
顔面と両腕の同時移植に成功!術後も良好
自動車事故からの大やけど
2018年、ディメオ氏は製薬会社での夜勤後、運転中に居眠りしてしまいました。結果として車は縁石と電柱に衝突し、ひっくり返って炎上。
ディメオ氏は通りかかった人に救助されましたが、酷いやけどを負うことになったのです。
その後、彼は医学的に誘発された昏睡状態で数か月過ごし、治療のために20回の手術と、複数の皮膚移植を受けました。
しかし従来の手術では、完全な視力や手の感覚を取り戻すことは難しいと判明。
そのため医療チームは2019年の最初に、「顔面と両腕の同時移植」という非常に珍しく危険な手術の準備に取り掛かりました。
全米臓器配分ネットワーク(UNOS)の最高医療責任者であるビッド・クラッセン博士は、この移植手術について「移植の世界では、おそらく最も珍しい」と述べています。
医療チームは早速ドナーを探しましたが、免疫上移植可能なドナーが見つかる確率はたったの6%でした。加えて、性別、肌の色なども合致していなければいけません。
結果としてドナーが見つかったのは、事故から2年経った2020年8月であり、数日後には23時間にも及ぶ大手術が開始されたのです。
顔面と両腕の同時移植に成功!術後も良好
140人以上からなる医療チームは、まずディメオ氏の両手を切断し、前腕部の途中からドナーの腕と交換しました。
前腕を移植するために、神経、血管、21本の腱が髪の毛ほど細い糸で縫合されたとのこと。
さらに、額、眉毛、鼻、まぶた、唇、両耳、顔面下部の骨を含む顔面全体を移植。
チームを率いたエドゥアルド・ロドリゲス博士によると「成功する可能性はわずか」だったにもかかわらず、手術は大成功を収めました。
さて、ディメオ氏は11月に退院して以来、毎日リハビリに取り組んでいるとのこと。
それには眉を上げること、目や口の開閉、親指を立てること、口笛を吹くことなどが含まれます。
また、今では自分で服を着たり、食事したりしており、愛犬と遊ぶこと、ジムでバーベルを上げることも可能です。
もちろん、すべての移植手術がそうであるように、拒絶反応のリスクは今後もずっと続きます。服用する薬の影響で感染病に対しては全くの無防備です。
それでもディメオ氏は、「人生には新しいチャンスがあります。人生に新たなチャンスが巡ってきたのだから、あきらめることはできない」と決意しています。
このように、医療技術の進歩は人に新しいチャンスを与えるものですね。コロナ禍という逆境の中で医療に取り組む人々は、確かに称賛に値します。
参考文献
‘New chance at life’: Man gets face, hands in rare surgery
提供元・ナゾロジー
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