従来の飛行機は胴体と翼に分かれており、旅客は胴体に乗るものです。
しかし、オランダ・デルフト工科大学航空宇宙工学部のロエロフ・ヴォス助教らエンジニアチームによって開発中のV字型飛行機「フライングV(Flying-V)」は、翼の中に旅客を乗せます。
このユニークで省エネな飛行機は9月1日にスケールモデルによる初飛行テストを行ない、成功を収めました。
目次
翼の中に人を乗せるV字型飛行機「フライングV」
フライングVのスケールモデル飛行に成功
翼の中に人を乗せるV字型飛行機「フライングV」

2019年、研究チームはこれまでにないユニークなV字型飛行機プロジェクトを発案しました。
通常の飛行機は翼と胴体がはっきり分かれています。胴体に客室や貨物室、燃料タンクなどが含まれており、「胴体を翼で飛行させる」形式となっているのです。
しかし発案されたV字型飛行機は「機体全体が翼」とも言える形状であり、翼の内部に客室を含むすべてが入ります。
このユニークな形状は飛行機に軽量化をもたらすため、今日使用されている最先端民間航空機「エアバス(Airbus A350-900)」よりも燃料を20%削減できるとのこと。

ちなみに想定されているV字型飛行機フライングVは、エアバスA350と同等の翼幅になります。客席も314席あり貨物収容量もほぼ同じなので、従来の飛行機の性能を維持しながら燃料削減できると注目を集めています。
フライングVの開発プロジェクトは既に開始されており、現在に至るまで様々な研究が行なわれてきました。
フライングVのスケールモデル飛行に成功
そして研究チームは9月1日、縮小型フライングVの初飛行テストに成功しました。
作成されたフライングVのスケールモデルは、翼幅3.06m・長さ2.76m・重量22.5kgであり、想定されている55mの機体の約20分の1のサイズとなっています。

さらにドローン制御システムと6kgのリチウムポリマーバッテリーが搭載されたとのこと。
今回行われた「スケールモデル」による飛行テストは、新型飛行機開発にとって重要な段階だと言えます。なぜならテストを行なって初めて懸念点を解消できたり、想定していなかった問題点を発見できたりするからです。
例えば、以前の計算では「離陸時の機体の引き上げ」に問題があると考えられていました。もちろん機体の改善は図られましたが、実際にスケールモデルでのテストを通して「懸念点の解消」を実証できたのです。
また今回のテストにより「着陸時に機体が傾く」ことも新たに判明しました。この傾向は荒い着陸を生じさせ乗客に不快感を与えてしまうため、改善が必要となります。
このようにスケールモデルでのテストでは離陸から着陸までの段階を一通り成功させ、研究チームに様々なデータをもたらしました。
今後研究チームは今回得られたデータを活用しフライングVの設計を調整していく予定です。
参考文献
tudelft
提供元・ナゾロジー
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