独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、1990年代半ばに共働き世帯が専業主婦世帯を上回って以降、働き方の多様化などから、共働き世帯が年々増加し、現在は専業主婦世帯の2倍ほどにもなる。中でも、夫婦それぞれが年収700万円超の世帯を「パワーカップル」と呼ぶようだ。

一般的に、年収が増えれば増えるほど、使えるお金も増える。共働き家庭の場合、仕事や子育てなどとの両立を考えると、生活にかかる費用も増加せざるを得ない。

早期リタイアを目指して楽しい老後生活を送るのか、長く働き続ける生活を送るのか、今から将来を視野に入れた資産形成の準備をしておいたほうがいいだろう。どう準備をしたらいいのかを、具体的な口座の分け方で解説していきたい。

近年は、天候不順に加えて、原油など資源価格の上昇などの影響を受けて、多くのモノの値段が上昇している。生活に必要なものの支出は仕方ないが、収入が多いからとお金を使っていてはお金を貯めることは難しいだろう。

資産形成の一歩は「家計マネジメント」から

一般的に、家計のマネジメント方法として、不測の事態に備えるために余裕資金をある程度貯蓄しておいたほうがいいと言われる。しかし、生活費の補てんなのか、それとも旅行など楽しみのための費用なのか、資産形成のための費用なのか、貯蓄の中身は異なるはずだ。そこで、使う目的ごとに分けて、貯蓄することをおススメしたい。

具体的には、(1)生活費の補てんなどを目的とした生活貯蓄、(2)旅行などの楽しみでの利用を目的とした目的貯蓄、(3)将来に備えて資産形成のための運用貯蓄というように3つに分けることをすすめる。具体的に、それぞれの貯蓄について解説したい。

(1)生活費の補てんなどを目的とした生活貯蓄
たとえば、病気やケガなどで働けなくなった時など不測の事態に備えるための貯蓄になる。

給与などが振り込まれる銀行口座から貯めていくわけだが、普通預金に預けっぱなしにしておくと、いつの間にか使ってしまうことが多いだろう。できれば使えないように、生活費の口座とは別の口座に貯蓄しておきたい。

たとえば病院に入院した場合でも、お金の立て替えが必要になる。ボーナス資金などを利用して定期預金などにしておいてもよいだろう。ただし、現在は超低金利の状況が続く。無駄にお金を預けておいてもお金は増えないので、生活費の4か月分程度を生活貯蓄の目安として考えておきたい。

(2)旅行などの楽しみでの利用を目的とした目的貯蓄
たとえば、家族で海外旅行に行きたい場合や、住宅を購入したい場合など、必要な金額と時期は自分で設定することが可能だ。目的の時期や金額に合わせて、生活貯蓄とは別に計画的に貯蓄を行いたい。貯蓄の方法としては、毎月計画的に確実に貯められる積立貯蓄を利用すればよいだろう。

(3)将来に備えて資産形成のための運用貯蓄
運用貯蓄の考え方としては、将来に備えての資産形成になるので、長期的な視点での運用が前提になるだろう。たとえば、老後の生活費用に備える場合には、「iDECO(イデコ・個人型確定拠出年金)」といった制度を利用することが可能になる。国や企業が将来の年金の額を約束している確定給付の従来の年金制度がある。個人型確定拠出年金=iDeCoでは、これらの年金に加えて、さらに自分のために自分で積み立てる年金という位置づけになる。

「個人型確定拠出年金=iDeCo」は積立形式で運用益にかかる税金が非課税となる金融商品で、2017年1月から始まったばかりだ。積立内容としては、(1)年間14万4000円から年間81万6000円まで、(2)60歳になるまで、(3)原則60歳まで引き出しが不可、(4)預金、保険、投資信託、という風にあらかじめ決められている。老後の生活資金を貯められるほか、毎月の積立金額は所得控除の対象になるので、結果として節税の恩恵も受けられる。老後資金であれば、ぜひ利用したい。

また、資産を運用したいと考えるのであれば、「NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)」という制度を利用することが可能になる。NISAには、2014年から始まった自分で投資を行えるNISAと、2018年から始まった積立型のつみたてNISAがある。

NISAはNISA専用口座を開設する必要があり、資産運用を目的とした口座になる。年間の投資総額は利用するNISAによって異なるが、通常であれば利益に対して20.315%の税金がかかるところを、NISA口座の投資枠で発生した利益に対しては非課税にできる。一方、特定口座や一般口座であれば、株式投資等で損失が発生した場合には利益と損益通算することができるが、NISA口座で購入した株や投資信託等は、特定口座や一般口座の株式等の利益と損益通算を行えないというデメリットがある。

資産形成を始めるためには、まずは普段の生活に不安がない状態を作っておく必要がある。そして、一つずつ行動していくことで、家計をマネジメントする力もついていく。行動しなければいつまでたっても何も変わらないだろうから、新生活や結婚を機に、家計マネジメント力の向上を図ってみてはどうだろうか。

文・横山利香(よこやまりか)/ZUU online

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