百貨店の売場を盛り上げるために、1社ではなく2社の力でできることを

アパレル業界に迫るサステナブル対応 競合関係のワールドとTSIがコラボをする理由
(画像=大丸東京店のキャンペーンスペース、『DCSオンライン』より引用)

そもそも今回の企画の発端は、2021年11月に「今後の百貨店における商売の在り方」について両社で協議したことがきっかけである。過去から情報交換の場をもつ関係にあり、ワールドの縫製工場をTSIが引き継いだり、関東エリアでは配送業務を共同で行っていたという経緯もあり、「百貨店の売場を両社で盛り上げるために、1社では不可能だが2社合同でならできることはないか」と模索していた。

両社には「百貨店に足を運ぶ消費者にSDGsに対する両社の取り組みを知ってもらいたい」との共通認識があったことから、今回のコラボキャンペーンの話がまとまった。

頭を悩ませたのが、どの百貨店グループと組むかという問題だ。SDGsやサステナブル商品について広くPRしていくために、複数の百貨店で開催すべきか、それとも地場に強い百貨店にするかなどさまざま検討した。結局、両社のブランドが数多く入る百貨店の中で経営目標の最上位にSDGs対応を掲げている大丸松坂屋百貨店がキャンペーン内容に合致するという結論に至った。

そこで大丸松坂屋百貨店にアプローチしたところ、課題認識の方向性が一緒であること、ファッションブランドの競合2社が手を組むインパクトの大きさを評価されすぐに実施が決まった。

2社共同での企画、運営体制となったが、キャンペーン担当者から広報までもともと交流が深かったことから、「非常にスムーズで、同じ会社かのように進んだ」(TSI 青木課長)という。

秋に再び、今回の内容より進化させた形でキャンペーンの実施を予定している。「今後はアップサイクルに加えてドネーション企画、また対象商品もファッションから広げ、アパレル以外で打ち出せるものがないかも議論し、売場での楽しさも演出していければと考えている。今回の取組みをご覧になられた他のディベロッパーさまにも興味を持っていただいており、可能性は広がっている」(フィールズインターナショナル 荒川部長)

若い世代の心をつかみ、サステナブルなファッションメーカーを目指す

アパレル業界に迫るサステナブル対応 競合関係のワールドとTSIがコラボをする理由
(画像=TSI店舗開発部 第3店舗開発課の青木拓也課長、『DCSオンライン』より引用)

アパレル業界において、SDGsにいかに対応するか、その取り組みを消費者にどう訴えていくかは大きな経営課題である。

「経営におけるSDGs対応の緊急度は、昨年度より確実に高まっている。世の中の流れに乗り遅れないよう、スピード感のある取り組みがこれまで以上に必要になってくると考えている」(TSI 青木課長)

「ワールドもSDGs対応に強い危機感を感じている。アパレル業界はサプライチェーンが見えにくく一筋縄にはいかないが、協力会社さん含めチェック機能を高めて対応していかなくてはならない。今やらなければ、百貨店からの信頼だけでなく、若い世代からファッションそのものがださいものだと認識されてしまう可能性すらあると思っている」(フィールズインターナショナル 荒川部長)

実際、百貨店業界では現在、SDGsに対応できない企業とは取引しないという流れになっているという。アパレル企業としても、先送りが許されない状況にあるのだ。

さらに今回のコラボキャンペーンを通して、若い世代ほどSDGsへの関心が高いことも浮き彫りとなった。若者にいかにファッションに対する良いイメージをもってもらうか、信頼されるメーカー、ブランドになれるかが、アパレル業界の未来を左右する重要な鍵を握るともいえる。

「今後は若い世代がターゲットのブランドを集めるなど、若者に向けてSDGsへのこだわりを伝える取り組みを強化していきたい」(TSI 青木課長)

提供元・DCSオンライン

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