厚生労働省の検討会は、新型コロナウイルス感染症を踏まえた旅館業法の見直しについて、感染が疑われる場合は宿泊を拒否できるとする方向性をまとめた。旅館・ホテルでのまん延を防止し、宿泊客や従業員の健康・安全を確保する。これを受けて厚労省は同法の改正を国会に提出する。
現行法(第5条)では、「伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき」を除いて宿泊を拒否できず、発熱等の症状があることだけで宿泊を拒否できないとされる。これに対して検討会の取りまとめでは、新型コロナを含めて感染症の範囲を明確にしたうえで、感染が疑われる場合でも直ちに宿泊を拒否できるようにはしないが、医療機関の受診や関連機関との連絡・相談を求めることができるようにする。感染の疑いにかかわらず、旅館・ホテル滞在中の感染対策としてマスク着用なども要請できるようにし、正当な理由なく応じない場合は宿泊拒否を可能とする。ただしこれは、パンデミックなどの際のみの措置とする考え。
このほか感染症に関係なく、いわゆる迷惑客や、旅館・ホテル側の合理的な負担の範囲を超える利用など、対応が困難なものを繰り返し求められた時にも宿泊拒否ができるとした。同時に、患者等に対する差別を防止するため、従業員研修の実施を努力義務とする。
現行法では、宿泊が必要な人は原則として旅館・ホテルを利用できるという旅館業が持つ公共性を背景に、宿泊拒否ができる要件を極めて限定的にしてきた。しかし、コロナ禍が継続するなか、宿泊客がマスク着用を拒否するなどでトラブルになる事例が多発。このため事業者側や、患者等の団体からも意見を聞きながら、現場に即した柔軟な制度への見直しを進めている。
提供元・トラベルジャーナル
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