幹細胞からサルの精子が作られました。
アメリカのヤーキース国立霊長類研究センターで行われた研究によれば、サルの万能細胞(ES細胞)を再プログラムすることで、卵子を受精させる能力がある精子細胞の作製に成功した、とのこと。
万能性のある幹細胞から精子を作る試みはマウスなどでは盛んに行われていますが、人間に近い霊長類(アカゲザル)で受精能力のある精子細胞の作製に成功したのは、世界ではじめてです。
研究内容の詳細は『Fertility and Sterility Science』に掲載されています。
メスだけ、オスだけで子孫を作る
近年の急速な技術進歩により、ES細胞やiPS細胞などの万能細胞から、精子や卵子を人工的に作成することが可能になってきました。
2018年に行われた「研究」では、メスマウスから得られた万能細胞(ES細胞)を精子に変化させ、別のマウスの卵子に受精させることで、健康なマウスの赤ちゃんを作り出すことに成功しています(※つまりメスのみで子孫を作った)。
またオスのDNAのみを含む遺伝編集されたES細胞の核(卵子の核の役割)と別のオスから採取した精子をまぜて、核を抜き取った卵子(卵子の細胞質の役割)に入れたところ、12匹のマウスの赤ちゃんがうまれました(ただし生後48時間で全滅)。
また今年発表された最新の「研究」では、ES細胞から卵子を作り出し、精子と受精することで健康な子マウスの出産にも成功しています。
これらの結果は、万能細胞(ES細胞)から作られた生殖細胞を組み合わせることで、メスだけでも(あるいは限定的ながらオスだけでも)次世代を作ることが可能であることを示します。
しかし、既存の実験結果はマウスに限られており、人間と同じ霊長類でも同様の仕組みが機能するかは不明でした。
そこで今回、ヤーキース国立霊長類研究センターの研究者たちは、より人間に近いサル(アカゲザル)を用いた実験を行いました。
サルと人間の生殖システムは非常に似通っているため、実験結果は人間での応用に期待できます。