とても冷たい冬の朝、私たちは車のフロントガラスから霜をこすり取らなければいけません。これは大変な作業です。
霜取りをもっと簡単にするため、アメリカ・バージニア工科大学機械工学科に所属するジョナサン・ボレイコ氏ら研究チームは、霜が電荷分離する現象を利用。
研究では霜を構成する小さな結晶を引きはがすことに成功しました。
この方法を発展させるなら、将来的に窓ガラスの霜を簡単に除去できるかもしれません。
詳細は、2月24日付けの科学誌『ACS Nano』に掲載されました。
目次
霜の下部は「正」に帯電し、上部は「負」に帯電する

窓ガラスなどに霜が生じると、その霜には、冷たい外気にさらされている上部の露出面と、外気から遮断されている下層で温度差が生じます。
霜の上部は冷たく、下部は温かくなるのです。
そしてこの温度差は、霜の中にあるイオンを温かい場所から冷たい場所へと移動させます。
しかしこの時、正電荷を持つイオンがより速く移動するため、結果として、霜の下部は正に帯電し、上部は負に帯電するようになります。
これは以前から知られている自然現象であり、「電荷分離」と呼ばれています。
研究チームは、この現象を利用して霜自体を窓ガラスから引きはがせると考えました。
霜の結晶をジャンプさせる

研究チームはまず、ガラス板や金属板の上に人工的な霜を作り出しました。この人工霜は氷の粒子サイズが非常に小さく、それぞれ数mm以下です。
次に、霜の5mm上にろ紙を吊るし、そこに注射器を使って水を滴下。
すると、霜の表面にある氷結晶がすぐにねじれて壊れ始め、水に浸したろ紙に向かってジャンプしました。
これは、霜表面の負に帯電したイオンが水中の正イオンに引き付けられたことが原因であり、これにより静電除氷(英訳:electrostatic de-icing)が生じたと考えられます。
また、このジャンプ現象は金属板とガラス板の両方で見られるため、板の熱的および電気的特性は関係ないと分かります。
ただし今回の研究では、小さな個々の結晶をジャンプさせただけであり、霜全体を取り除くことはできていません。
今後、研究チームは霜に近づける電荷の量を増やすことで、大きな氷床を引きはがそうとしています。
水の代わりに帯電した電極を利用するなら、さらに大規模な結晶ジャンプを誘発できるかもしれません。
ボレイコ氏は、「静電除氷効果を増幅して、氷や霜の層全体を瞬時にはがすことができれば、航空機や空調システム業界に大きな変革をもたらす可能性がある」と述べています。
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将来的には車のフロントガラスの霜も簡単に取り除くデバイスが作られるかもしれませんね。
提供元・ナゾロジー
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