宝石の王者として不動の地位を誇るダイヤモンド。
その鮮やかな輝きは、古来より多くの人々を魅了し続けてきました。
しかしながら、その魅力ゆえに天然ダイヤモンドの価値は高く、人々の手に簡単に渡ることはありません。
「ダイヤモンドの輝きをもっと気軽に楽しみたい」そんな人々の願いから、これまで数多くの「ダイヤモンド類似石」が誕生してきました。
今回は、きらびやかな魅力に溢れたダイヤモンド類似石たちをご紹介していきます。
ダイヤモンドの特徴

ダイヤモンド類似石をご紹介する前に、まずダイヤモンドの特徴について詳しく見ていきましょう。
ダイヤモンドを唯一無二の宝石として特徴づける要素は、大きく分けて「硬度」と「輝き」の2つです。
まず硬度ですが、ダイヤモンドは傷つきにくさを示す「モース硬度」という指標では、天然の鉱物の中でもっとも傷つきにくい硬度10を示します。
そのため、ダイヤモンドの研磨はダイヤモンドの粉末を付着させた研磨機でないと行うことができません。
次にダイヤモンドの輝きですが、GIA(米国宝石協会)で審査されるダイヤモンドの輝きは「ブリリアンシー」「シンチレーション」「ファイア」の3つから構成されています。
ダイヤモンドに光が当たった時に見られる白く強い輝きである「ブリリアンシー」、ダイヤモンドを動かした時のきらめきである「シンチレーション」、そしてダイヤモンドの中で光が屈折を繰り返し、虹色の光となって現れる「ファイア」は、ダイヤモンドの品質を決める重要な指標です。
ダイヤモンドの類似石が流通した理由
数々の魅力を持つダイヤモンドですが、その美しさと産出量の少なさから、とても高価な宝石の代名詞としても知られています。
現代におけるダイヤモンドの価値については、業界が厳格に市場流通量を調整し維持されていることが知られています。
しかしそれはダイヤモンドに希少価値がないということではありません。
そのため「ダイヤモンドの美しい輝きをもっとリーズナブルに楽しみたい」という需要から、古来より人々はより安価な、ダイヤモンドの代用品にふさわしい宝石を探し求めてきました。
同時に、安価に大量生産できる人工宝石の研究も進められてきました。
これらの要素が重なり合い、数多くのダイヤモンド類似石が世に生み出されたのです。
それでは、ここからはダイヤモンドの類似石として選ばれた宝石たちをご紹介していきます。
ダイヤモンドの類似石となった宝石
ジルコン

天然のダイヤモンド類似石の代表格と呼んでも差し支えないのが、このジルコンです。
2000年前にはすでにダイヤモンド類似石として流通してきたという歴史ある宝石であり、その輝きはダイヤモンドと比べても引けを取りません。
屈折率は1.93から1.98と、ダイヤモンドの2.42には及びませんが、きらめきを生み出す分散度は0.039と、ダイヤモンドの0.044に近い値を示します。
そのため、ダイヤモンドのようなギラギラとした虹色のファイアを楽しむことができます。
しかもジルコンはダイヤモンドよりも安価に手に入るため、ダイヤモンドのような鮮やかな輝きをよりリーズナブルに楽しむことができるのも魅力です。
クリスタル

ジルコンと同等か、それ以上にダイヤモンド類似石としての古い歴史を持つのがクリスタル、つまり水晶です。
無色透明で大きな結晶が産出しやすいクリスタルは、古来よりダイヤモンドの代用品として貴族の装飾品に用いられてきました。
といっても屈折率や光の分散度はあまり高くないため、ダイヤモンドのようなファイアを見せることはないので、現代人の目で見ると簡単に区別がついてしまいます。
カラーレスサファイア

カラーレスサファイアがダイヤモンド類似石として利用されはじめたのは、20世紀に入ってからです。
サファイアは、天然の鉱物の中ではダイヤモンドに次いで傷つきにくいモース硬度9を示し、割れにくさを示す靭性(じんせい)はダイヤモンドを上回るという丈夫さを持っています。
しかも、サファイアはダイヤモンドに比べると安価に流通しています。
そのため、物に接触しやすい指輪などのアクセサリーにおいて、ダイヤモンドの代わりに使われることが少なくありません。
ただし、クリスタルと同様に屈折率や分散度は高くなく、ダイヤモンドのようなファイアは見せないので、注意深く調べるとダイヤモンドでないことが分かってしまいます。