ブレーシングの練習方法
正しい腹式呼吸をマスターすることはブレーシングの練習になる。ただ、ブレーシング状態を作るための腹式呼吸の練習は、最初はウエイトトレーニングと切り離して行うようにしたほうがいいだろう。そうして腹式呼吸がしっかり行えるようになったら、ウエイトトレーニングと組み合わせてみる。
腹式呼吸によってブレーシング状態を作りながら高重量のリフティング種目を行うようにしてみよう。ブレーシング状態が作れるようになってからのほうが明らかに挙上重量が増え、動作が楽に行えるようになっているはずだ。ここでは、正しい腹式呼吸の練習をしたことがないという初級者のためのやり方と上級者向けの方法を紹介しておきたい。
【初級者向けの腹式呼吸練習】
1床にあおむけになる。膝を立て、両足の裏は床につけておく。片手を胸の上に、反対の手は肋骨の下あたり(腹の位置)に置く。手を置くことで、呼吸による横隔膜の動きが確認できるはずだ。
2まずはゆっくり鼻から息を吸う。できるだけゆっくり大きく息を吸ってみよう。息を吸い込むことで腹が膨らんでいくのが分かるはずだ。ただし、意識して腹を膨らませようとしていけない。横隔膜をしっかり動かした結果として腹が膨らむわけで、腹を膨らませようと意識するわけではないということを忘れないように。
3息を吸い込んだら腹の筋肉を意識し、しっかり緊張させる。
4息を吐きながら腹部をへこませていく。
5ここまでの行程で、胸の上に置いた手が、胸の膨らみで上下してはならない。空気は肺に入るものだが、横隔膜を使うので胸の動きはないはずだ。
6この状態での腹式呼吸を10回ほど繰り返す。
7この方法であお向けでの腹式呼吸が正しく行えるようになったら、次は上級者向けのやり方に挑戦してみよう。
【上級者向けの腹式呼吸練習】
1イスに座り、頭、首、肩をリラックスさせておく。2あお向けから座位に姿勢が変わるだけでやり方は同じだ。片手を胸に、もう一方の手を腹に乗せ、横隔膜を意識しながらゆっくりと鼻から息を吸う。3横隔膜を使って呼吸をし、息を吸い込んだらブレーシング状態を作ってから息を吐き出すようにする。4ここでも胸は上下させないように。5このやり方での腹式呼吸を10〜15回ほど繰り返す。
【注意事項】
この呼吸法は10〜15回を一日数回、ジム以外の場所で毎日行うようにする。練習を積めば積むほど横隔膜を使った呼吸法とブレーシングが身につき、意識しなくてもできるようになるはずだ。
十分に練習を積んだら、ジムでトレーニングに取り入れてみる。ただ、最初のうちは呼吸に気を取られて、リフティングのフォームが崩れてしまう可能性がある。そのため軽い重量から試すようにしよう。そのうち、意識しなくても横隔膜呼吸とブレーシングをリフティングに組み込めるようになっていくはずだ。
何度も繰り返すが、横隔膜を使った呼吸法とブレーシングは、練習を積めば積むほど自然に行えるようになる。高重量でのリフティングに取り入れる場合は、必ず意識しなくても行えるようになってからにしよう。
ボディビルにはバキューム
ここで解説している横隔膜呼吸は、高重量を扱うリフターだけでなく、バランスの取れた筋量を作り上げたいボディビルダーにもぜひ勧めたい。なぜなら、この呼吸法によって引き締まった胴部を完成させることができるからだ。
ボディビルダーの場合は、横隔膜呼吸+ブレーシングではなく、横隔膜呼吸+バキュームを行う。ウエイトリフターとボディビルダーでは目的が異なるので、用いるテクニックにも多少の違いがあるのでぜひ知っておいてほしい。
先に解説した横隔膜呼吸+ブレーシングの練習がどこででも行えるのと同じように、バキュームの練習もジム以外の場所で好きなときに行うことができる。特別な器具もいらないし、動作を伴わないので広いスペースも必要ない。静かに行えるので、練習の時間を気にする必要もないのだ。
やろうと思えば電車などの公共の交通機関で移動しているとき、仕事や勉強の合間やテレビを見ながら、寝転がりながらでも練習することができる。
ボディビルダーにとってバキュームを練習することのメリットは、これをしっかり練習しておくことで体幹部の意識が容易になり、ステージ上で美しい姿勢を維持し、身体全体の理想的なXシェイプを披露することができることにある。
ボディビルコンテストでは、ただ腕が太い、背中の隆起が見事である、割れた腹筋が目立つ、大腿部が太いというような個々の筋肉のサイズや仕上がりに重点は置かれていない。筋量に加えて全身のシルエット、プロポーション、デフィニションが際立っていなければならないのだ。
そのためにはポージングでの見栄えを良くすることが不可欠になる。だからこそバキュームは役立つのだ。バキュームの練習が十分にできているボディビルダーは、ステージ上で必ず注目されるのである。