機械への入力は通常、スイッチやレバーなどを手で入力する必要があります。
こうした筋肉の動きを必要とする入力方法は、重度の障がいを持つ人にとっては利用が難しい場合があります。
1月27日に科学雑誌『IEEE Transactions on Human-Machine Systems』で発表された新しい研究は、重度の運動障がいを持つ人に向けた、脳で考えるだけで電動車いすの制御が可能なブレインコンピューターインターフェース(BCI)を報告しています。
この装置は、脳になにか装置を埋め込むというようなユーザーに身体的な負担をかけることなく、ユーザーの思考を検出できるといいます。
頭に装着するだけの脳波電極
ポルトガル、コインブラ大学システムロボット研究所の研究チームは、重い障がいを持つ人が電動車いすを制御するためのさまざまなアプローチをテストしました。
重度の運動障がいを持つ人は、筋肉の動きが必要な従来の電動車いすでは苦労することがあり、この代替として脳波で機械を制御するBCIが注目されています。
脳制御車いすは、ユーザーの頭に装着された脳波電極から、車いすを制御するための神経インパルスと、ユーザーの思考プロセスを検出します。
ただBCIは転送速度が遅く、入力の精度も高いとは言えません。
またユーザーにも機器の制御のために、継続的な注意と集中を要求することになり、かなり精神的・肉体的負担が高くなります。
このため脳を使った制御システムはまだ現実での実用段階には達しておらず、実験室の限定された環境でのみ試されている技術です。
BCIが実用化されるための課題は、高い信頼性と精度を達成することなのです。
特に脳制御車いすは、安全上の理由から高い信頼性を必要としています。
たとえば、ブレーキが90%しか適切に機能しなかった場合、止まろうと考えてから1秒で停止できる場合と、10秒かかる場合が出てきてしまうのです。
そんな調子ではとても脳制御車いすは利用できません。
そこで、今回の研究では脳制御の信頼性を100%に高めるために、新しい方法を試すことにしました。
それは車いすの周囲を認識して、自律的な動きを実行できる支援ナビゲーションシステムと、脳波制御を組み合わせた「協調制御」という新しいシステムです。