さらに、極めつけはデジタル化だ。サプライチェーン・マネジメントの目指すべき姿は、「全体最適」であり、ものづくりから生産、調達から店頭までの一連の流れを最適にデザインすることなのだ。したがって、極論をいえばPLMは日本で一つあればよい。実際、自動車のフォルクスワーゲンは、PLMをクラウドに上げ、数万という部品メーカが一つのPLMを動かしている。アパレル産業では、スマイルカーブといって、川上か川下が利益を持ち、中間流通の利益が少なくなる言葉があるが、これではいけないのだ。チェーン全体が等しくリスクとプロフィットを共有し、コストも工程管理も透明性を担保せねばならない。ファーストリテイリングは、このあたりを徹底しており、自社がつないだ為替を商社に買わせるなど、商社が抜けないように徹底しているのだ。

商社3.0は、デジタル化によるインキュベーションと海外進出支援

 会議室で、唸りながら議論するから先が見えない。自分達の顧客であるアパレルに何を求めているのか、聞けばよい。マーケットインなどと人に求め自分達がプロダクトアウトになっていることに気づいて頂きたい。

 今、アパレルが最も求めているのは、恐竜の卵である「リトルモンスターアパレル」の孵化と経営支援、人、金、ノウハウの注入であり、固定費の高い商社のノウハウをアパレルに結合し、巨大な商社を流通から外すことである。同時に、中小アパレルに代わりデジタル投資を行い、世界の多くの素材メーカーや供給業者を統合してバリューチェーンの垂直統合を行うことだ。私が提唱すりデジタルSPAなのだ。

 大手アパレルが喉から手が出るほどやりたいのは、成長著しい東南アジア、中国富裕層へのアクセスだ。このように、自分が何ができるのか、ではなく、アパレルは何を求めているのか、何をすれば日本の産業界は盛り上がるのか、とデマンド型に考えを180度転換し、商社3.0を考えるべきなのだ。

 若手、商社マンに告ぐ。君たちはまだ若い。私のような一介の繊維商社の営業マンが、30代半ばでコンサルタントに転身し、50社のアパレル企業の立て直しに成功したのは、本気で仕事と向き合い、やりきってきたからだ。変わりたくない人には何をいっても変わらない。変わらない人を、陰であれこれいっても何も変わらない。私はもう年齢的に次のアパレル産業復活の世界をみることはできないだろうが、君たちが産業を守らねば、日本からアパレル産業は消えてゆき、全て外資になるだろう。

 それも、また悪いことではないが、君たちは勝ち馬に乗るような小賢しい人間なのか。商社マンは今の日本をつくり、今の日本をダメにした。今、君たちに必要なことは他責を捨て、商社マンとしてのでかい視野をもち、産業をアジアに、そして世界に広げることだ。まずは、自分自身が、何ができるのかを考えてもらいたい。最後に、私が学生時代、就職活動中に財閥系商社の先輩から言われた言葉をもって、3回にわたった新産業論の〆としたい。

 商社とは、電話と人しかない会社だ。つまり、電話と人で、できることは何をやっても良いといえる。できないのは、本人にやる気が無いからだ。商社不要論など○○食らえだ。

提供元・DCSオンライン

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