量子的な重ね合わせ状態への時間的介入は、収束する現実の時間にも影響を与えるようです。

10月23日に『Nature communications』に掲載された論文では、量子力学的な重ね合わせにおける相対性理論の影響がはじめて示されました。

なにやら難しい話のようですが、実は原理は至って簡単。元となるのは双子のパラドックスと呼ばれる問題です。

双子のパラドックスでは、双子の一方が光速に近い速度で宇宙を旅して戻ってくると、地球に留まっていた兄弟よりも若くなってしまうという現象を示しています。

これは、光速に近い速度で運動するほ物体は、経過する時間が遅くなるというアインシュタインの相対性理論が元になっています。

ではこの時、比較する対象が人間の双子ではなく、量子的に重ね合わせ状態にされた原子時計だったらどうなるか? と論文の執筆者であるセントアンセルムカレッジのスミス氏は考えました。

量子的な原子時計の重ね合わせの状態は、量子力学において双子とも言えます。

その一方を高速で移動させ時間の経過を遅らせた場合、収束する現実の時間はどうなってしまうのでしょうか?

目次
重ね合わせの一方への時間的介入は収束する時間を変化させる
量子力学と相対性理論の融合

重ね合わせの一方への時間的介入は収束する時間を変化させる

原子時計を加速させることで、現実世界の時間の遅れを観測することに成功
(画像=高速移動によって遅れた世界線が影響を受けなかった世界線と混じると、少しだけ時間が遅れる世界に収束する / Credit:ナゾロジー、『ナゾロジー』より引用)

結論から言えば、何もしなかった方に比べて、原子時計を高速移動移動させると、現実世界の時間が少し遅れるようです。

重ね合わせの一方を高速移動させると、移動している原子時計は時間の経過がゆっくりになります。

この状態で観測を行い、時間を収束させると、時間の遅れた世界が足を引っ張るために、収束する現実の時間が引き下げられ結果的に時間が遅れるとのこと。

この事実は、たとえ観測されていない重ね合わせの1つに過ぎない世界に対する介入でも、収束する現実に影響を与えることを意味します。

量子力学と相対性理論の融合

原子時計を加速させることで、現実世界の時間の遅れを観測することに成功
(画像=量子力学と相対性理論の融合 / Credit:pixabay、『ナゾロジー』より引用)

今回の研究により、重ね合わせ状態にある一方への時間的介入が、観測を通じて収束する現実にも影響することが計算により、明らかになりました。

論文を執筆した研究者は、この計算結果が正しいかどうかを、多くの人々に検証してもらいたいと述べています。

量子力学の重ね合わせの概念を相対性理論の時間の遅れと組み合わせた今回の研究は、学術的に興味深いだけでなく、様々な応用へとつながると予想されます。


参考文献

sciencedaily


提供元・ナゾロジー

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