スイス・チューリッヒ大学(University of Zürich)は、東アフリカのウガンダにて、野生では初となるアルビノのチンパンジーを発見した旨を報告しました。
まだ生まれて間もないオスの子で、研究チームは、アルビノ個体が野生下でいかに暮らすかを知るべく、追跡調査を開始。
しかし、悲劇的なことに、アルビノは同じグループのオスたちに惨殺されてしまったとのことです。
研究は、7月16日付けの科学誌『American Journal of Primatology』に掲載されています。
目次
アルビノの悲惨な最期とは
アルビノ個体が発見されたのは、2018年7月、ウガンダ北西部にあるブドンゴ森林保護区内でした。
真っ白の体毛は、仲間のチンパンジーと違って、非常に目立ったとのことです。
体のサイズと母親の妊娠時期から判断して、最初の目撃時には、生後14日〜19日ほどだったと推定されています。
研究主任のMaël Leroux氏は、取材に対し「私たちは、アルビノ個体に対するグループメンバーの行動や反応を観察することにとても興味を持ちました」と話しています。
最初の目撃から数日間で、アルビノの乳児と母親のチンパンジーは何度も観察されました。
ところが、その時すでにグループ内のチンパンジーには、敵対心や攻撃性の兆候が見られたといいます。
ある日、母子の近くにいたグループのメンバーが、天敵や見知らぬ人間に遭遇した時に発する吠え声を発していました。
その直後、オスのグループと母親が互いをけん制し始め、ついには母子に襲いかかり、アルビノを奪って樹上に持ち去ったのです。
そして、7月19日の朝、午前7時30分過ぎに、アルビノの子は最後の鳴き声を上げて、絶命しています。

その一方で、グループの全員が母子に敵対していたわけではありませんでした。
オスたちと母親がけん制している間、1頭のオス個体が母親に近づいて、安心させるために手を差しのべたそうですし、また、別のメス個体は、アルビノの子の側で静かに見守っていたようです。
しかし、その2匹以外の行動は残酷きわまりないものでした。
グループリーダーのオスは、アルビノの子の片腕を噛みちぎり、そこに6匹のオスが加わって、指や足、耳に噛みつき始めました。
その後、アルビノの遺体はグループ内でたらい回しにされ、全身を隈なく調べられています。
チンパンジーが遺体をチェックすることは珍しくありませんが、「背中をなでる」「唇で毛をつまむ」「肛門に指を入れる」といった今までにない行動も観察されました。
アルビノ個体は、チンパンジーに限らず、体色が目立ったり、視力が弱かったりするので、野生下で生き抜くには不利です。
それでも、同種の仲間に敬遠されても、殺害されるということはあまりありません。
知能の高いチンパンジーは、アルビノの個体に何か不吉なものを感じ取ったのかもしれません。
提供元・ナゾロジー
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