ミツバチの一種であるセイヨウミツバチ(学名: Apis mellifera)は、今日、ヨーロッパからアフリカ、中近東まで世界に広く分布しています。
一方、その起源の解明は、何十年にもわたって専門家の悩みの種となっています。
しかしこのほど、ヨーク大学(York University・カナダ)の研究により、セイヨウミツバチは、アジアで生まれた可能性が高いことが判明しました。
名前に”セイヨウ(西洋)”とあるからといって、生まれはヨーロッパのどこかではないようです。
研究は、12月3日付けで学術誌『Science Advances』に掲載されています。
セイヨウミツバチが養蜂家に人気な理由とは

セイヨウミツバチは、養蜂家にとても人気があり、農作物の受粉やハチミツの生産を目的として、多くの国で飼育されています。
日本でも明治時代にセイヨウミツバチが輸入され、養蜂がスタートしました。
彼らが重宝される最大の理由は、環境適応力の高さです。
セイヨウミツバチは、熱帯雨林から乾燥地帯、冬場が寒い温帯域まで、あらゆる環境で生き延びる能力を持ちます。
また、一度巣を作ってしまうと、環境が多少悪くなっても根気強く同じ巣を使い続け、あっちこっち移動したりしません。
対照的に、日本固有のニホンミツバチは、周囲にエサがなくなったり、気温が変化したり、巣箱を何度も開け閉めされると、ストレスを感じて別の巣に引越してしまいます。
そのため、ニホンミツバチの養蜂には常に、急に巣からいなくなるリスクが付いて回るのです。
それから、セイヨウミツバチの方が、一つの巣から採取できるハチミツの量が多いことも、養蜂向きな理由の一つでしょう。
西アジアで誕生した可能性が大
研究チームは今回、野生のセイヨウミツバチの18の亜種、計251匹を対象にゲノム解析し、そのデータをもとに、起源と分散パターンを再構築。
その結果、セイヨウミツバチは、西アジアを中心としたアジア起源であることが遺伝子データから強く支持されました。
遺伝子解析では、アフリカで生まれた可能性が6%、ヨーロッパで生まれた可能性が3〜6%だったのに対し、西アジア内で発生した確率は64~71%でした。
また、分散パターンを調べたところ、西アジアからアフリカへ進出したグループと、ヨーロッパへ進出したグループが特定されています。
そこから、さまざまな地域に進出し、今日確認されている約27の亜種の誕生につながったようです。
加えて、研究チームはセイヨウミツバチが 高い環境適応能力を持つ原因と考えられる遺伝子変異を発見しました。
データによると、1万2000個以上ある遺伝子のうち、145個に新しい環境に適応のための遺伝的変異のサインが見られたのです。
これは特に、働きバチの行動を変化させる変異が大半を占めていました。
つまり、働きバチがまず活動しやすいように環境に適応した遺伝子変異を起こし それが種全体に拡散していったようです。

研究主任のアムロ・ザイード(Amro Zayed)氏は、「世界で最も重要な受粉媒介者であるセイヨウミツバチの進化や遺伝子、適応方法を理解するには、その起源を明らかにすることが必要不可欠だ」と話しました。
同氏と研究チームは、本研究の成果により、専門家の間で長らく続いてきた「セイヨウミツバチの起源」に関する議論に終止符が打たれることを期待しています。
その上で、「今後は、セイヨウミツバチが異なる気候や地域にいかに適応したかという問題により集中できるようになる」と述べています。
参考文献
Mysterious origins of western honey bees revealed
Where did western honey bees come from? New research finds the sweet spot
元論文
Thrice out of Asia and the adaptive radiation of the western honey bee
提供元・ナゾロジー
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