「進化を実感できたトレーニングほど、ライバルに教えたくない」そんなアスリート心理によって“門外不出”となっているメソッドはたくさんあります。今日ご紹介するのもそのひとつです。
文:IM編集部
スポーツアスリートは、戦いに勝つために身体能力を極限まで、自在に操るレベルを目指してトレーニングを積んでいます。当然ながらレベルが高い選手ほど高負荷が課せられ、肉体的にも精神的にも過酷になるため、怪我と紙一重の次元に挑む場面が日々繰り返されています。
その対応として、アスリートのトレーニングや実戦に必要な用具、施設、サプリメントなどの進化はめざましく、より高い次元へ挑むための周辺環境は日進月歩で整えられています。
それに比べて、実際に筋肉や神経の能力を高めるためのトレーニングはどうかというと、その手段はさほど進化していないような印象です。見方を変えると、身体能力の向上に必要なルートはとてもシンプルだとも言えます。以下にいくつか例を挙げてみます。
身体能力向上の必須ルート
◆出力アップ→筋肥大
◆スピードアップ→神経伝達の速度と量の向上
◆可動域アップ→筋肉の柔軟性向上と神経伝達オフ
◆スタミナアップ→エネルギー源の蓄積と燃焼率アップ、さらに疲労蓄積軽減
◆判断力アップ→脳の判断精度の向上と四肢への伝達能力の向上以上のように各パーツの働きを高めていくことでスポーツパフォーマンスが高められ、「勝負に勝つ」という目的が叶えられるのです。
本連載でご紹介してきたように、加圧トレーニングには数多くのメリットがあり、そのメリットはもちろんスポーツパフォーマンスの向上にも役立ちます。
加圧トレーニングでは、一般的な筋力トレーニングと比較して極めて軽い使用重量でトレーニングを行いますが、同等かそれ以上の筋力アップが得られます。これは、適度な血流制限によって生ずるノルアドレナリン、成長ホルモン、インスリン様成長因子Ⅰ(IGF – 1)など、アナボリック系ホルモンの活性化が急激に進むことが原因だと考えられています。また、負荷なし(自重)であっても、より効率的なトレーニング効果が得られるケースが多数存在しています。
加圧トレーニングの教科書とも言える『加圧トレーニングの理論と実践』(講談社刊)の中では、「スポーツパフォーマンスに対する効果」というテーマで、実践現場で培われたノウハウの詳細が示されています。今回は、その中から短距離スプリンターとプロ格闘家の例を要約して紹介しましょう。