ナメクジの新行動が発見されました。

最新研究によると、ナメクジは尾先の方からスライム状の糸を垂らして、地上に降下するという。

まるでS.W.A.T.部隊のようですが、学問的には初めて報告された行動とのことです。

研究は、2月22日付けで『Austral Ecology』に掲載されています。

糸をつたって天敵から逃げるためか?

この行動を発見したのは、オーストラリア・ニューカッスル大学の生態学者で、本論文著者のジョン・グールド氏。

同氏は、ニューサウスウェールズ州のコーラガン島にて、カエルの現地調査を行なっていました。

そのとき、1匹のニヨリチャコウラナメクジ(学名:lehmannia nyctelia)が、地上1m付近で浮いているのを発見したといいます。

氏は、最初にその光景を見たとき、クモが1本の糸を垂らして地上に降りている最中だと思ったとのこと。

ナメクジは、フェンス上部から地上に向かってスライム状の糸を1本垂らし、ものの数分で半分の距離を滑り降りていました。

のっそりと動くナメクジにしてはかなりのスピードです。

「糸を垂らして地上に降下する」ナメクジの新行動を発見
(画像=ニヨリチャコウラナメクジ / Credit: ja.wikipedia,『ナゾロジー』より 引用)

グールド氏の撮影した映像を見たドイツ統合生物多様性研究センター(iDiv)の保護生物学者で、論文共著者のホセ・バルデス氏は、過去の先行研究を洗いざらい調べて、ナメクジの行動を比較調査。

その結果、学問的にはまったく新しい行動であることが判明しました。

唯一、マダラコウラナメクジ(学名:Limax maximus)は、太い粘液のロープをねりあげ、それにぶら下がりながら交尾をしますが、これほど細い糸を垂らして、地上に降下する移動方式は前例がありません。

バルデス氏は「アリの群れやトカゲなどの天敵から逃避するのに役立っているのではないか」と推測します。

「1本の細い糸は、それに費やす粘液とエネルギー量の両面で効率的です。粘液が少なければ、糸を作る時間を短縮できますし、エネルギーも節約できるでしょう」と続けました。

一方で、学問的には新発見ですが、ナメクジ自身はとうの昔からやっているので、見かけたことのある人もいるかもしれません。

両氏は今後、この行動が他の種でも見られるのか、どういった機能があるのかを調べていく予定です。


参考文献

Watch a slug use a thin thread of slime as a slide to reach the ground

元論文

Terrestrial slug uses a vertical bridge of mucus to descend rapidly from heights