Googleの研究者たちによって、化学反応を量子コンピュータでシミュレートすることにはじめて成功しました。
シミュレートされた反応自体は非常に簡単なものですが、量子コンピュータのより汎用的な用途に向けた大きな第一歩です。
8月28日に「Science」に掲載された研究によると、使用されたのは「Sycamore(シカモア)」と呼ばれる54量子ビットを備えた量子コンピュータとのこと(量子ビットについてはこちらの記事も参考に)。
このSycamoreは2019年に従来型のコンピュータが1万年かかる計算を僅か200秒で解き、量子コンピュータの優位性(量子超越性)を実証したことでも有名です。
量子コンピュータの参戦により、化学シミュレーションの世界に激震が訪れようとしています。
従来型コンピュータの限界
これまで既存のコンピュータを用いて、多くの化学反応シミュレーションが行われました。
しかし化学反応に参加する原子や分子が増えるたびに計算は指数関数的に複雑になります。
そして悲しいことに、現在のコンピュータには、そのような爆発的な複雑さの上昇についていくことが厳しくなってきています。
一方、量子コンピュータにとって計算量の増加はそれほど苦にはなりません。
量子ビットを1つ増やすごとに処理能力が2倍になるため、適切なアルゴリズムを用いれば、計算能力もまた爆発的な増加が見込めるからです。
今回の研究で使われたSycamoreは54量子ビットを備えており、2の54乗個の演算を並列計算により同時に行うことが可能です。