何かと誤解の多い活性酸素。加圧トレーニングも例外ではなく、「高い圧ほど活性酸素が増える」という説が、いつの間にか一人歩きしています。実際は…もちろん大きな誤解です!
活性酸素が悪者になったワケ
今回は「加圧トレーニングが活性酸素を多く発生させる」という説は正しいか否かということについて解説してみたいと思います。最初に答えを言ってしまいますが、この説はもちろん間違いです。この誤った思い込みがなぜ生まれたか? また実際に加圧トレーニングと活性酸素の関係は? といったことは後半にお伝えするとして、まずは活性酸素が体に及ぼす影響について考えてみましょう。
そもそも「活性酸素」とは何か?厚生労働省が一般に公開している健康情報サイト『e – ヘルスネット』によると、活性酸素とは「私たちが呼吸している大気中の酸素よりも活性化された酸素およびその関連分子の総称」であり、その性質は「不安定で色々な物質と反応しやすい」のが大きな特徴とされています。
活性酸素が過剰につくられると、体内の細胞を傷つけ、がんや生活習慣病などの原因となってしまいます。それを防ぐ体内のシステムとして「抗酸化防御機構」がありますが、活性酸素の産生によっては抗酸化防御機構とのバランスが崩れてしまう。この状態を「酸化ストレス」といい、老化や、時に深刻な疾患にもつながっていく可能性もあります。
活性酸素には、私たちの体の中の免疫機能や感染防御といったポジティブな働きももちろんあるのですが、「活性酸素=悪」というのがおおかたのイメージではないでしょうか。
そのイメージを決定づけたのは、おそらく1992年に発表された『スポーツは体に悪い』という学説かもしれません。これをきっかけに活性酸素の体に及ぼす悪影響が注目され、そこから長年にわたり「運動をすると大量の酸素を呼吸するので活性酸素が発生し、身体に悪い」という説が唱えられました。
活性酸素がどれくらい発生するかという量の側面からだけで判断すれば、運動するよりなるべくじっとしているほうが発生量は少ないですし、酸素を大量に取り込む持久系のアスリートは、それだけ活性酸素にさらされる機会も増えるはず。
ただし、運動を継続的に行うことによって活性酸素が適度に増加していくと、歩調を合わせるように体内では酸化ストレスへの適応性・抵抗性も高まっていくというのが一般的な考え方になってきています。
前述の『e – ヘルスネット』でも、全身持久力の高い人のほうが、エネルギー消費の予備力が高いぶん、活性酸素などの有害物質の生産量が少なくなることから、有酸素運動など全身持久力を高める運動を適度に継続することをすすめています。
加圧中に活性酸素は増える?
さて、冒頭に挙げたように「加圧トレーニングが活性酸素を多く発生させる」という誤解は、どこから生まれたのか。それはやはり、加圧トレーニングの持つ「きつい、苦しい、激しい運動」のイメージが、ネガティブ妄想につながったのでしょう。
これまで、加圧トレーニング中の血液分析からさまざまな生理現象を科学的にひも解いてきましたが、活性酸素そのものを検証した研究は実施されていません。しかし、加圧トレーニングのバイブル的書籍『加圧トレーニングの理論と実践』は、加圧トレーニングがもたらす次のような効果を伝えています。
●ミトコンドリアの活性化
●体のさまざまな部位に生じる若返り現象(細胞の活性化促進効果)
●筋肥大促進
●脂肪燃焼効果の増幅
●身体損傷部位の超早期回復
これらはいずれも、細胞の生まれ変わりを促進する効果を示しています。その事実は、間接的ながら活性酸素の「悪行」に体が全く屈していないことを証明しているのではないでしょうか。
また、活性酸素量は分解される酸素の量に比例しますが、加圧トレーニングで血流制限をしている状態では、血中の酸素負債( 濃度低下) が猛烈に進んでいるため、同一時間、同一運動中の酸素分解量は、通常トレーニングより加圧トレーニングの方が少ないと言えます。その差は運動強度によるので一律の割合で示すことはできませんが、ベルトを装着している腕や脚の血中酸素量は、明らかに少なくなっています。こうしたことからも「高圧使用ほど活性酸素の発生が多くなる」という説は成り立ちません。むしろ「ゆる圧」の方が抹消血管まで運ばれる酸素量は多いので、活性酸素が発生しにくいという根拠は成り立たないとも言えます。
加圧トレーニングと活性酸素については、こんな誤解もあります。血流制限状態から血管の圧迫が解かれて一気に再灌流すると、瞬間的に血中酸素量が急増する、それが問題だという説です。しかし、血中酸素は動脈内では豊富にあるものの、再灌流時はミトコンドリアで細胞燃焼のために消費された後の血液が内臓へ戻るので、血中の酸素飽和濃度は70%以下になります。
手術時の止血のように長時間の血流制限から再灌流された場合は、肝臓に対する細胞レベルでの悪影響が生じるようです。でも、加圧トレーニングの基本的な血流制限時間は、腕の場合で10~15分と定められており、長時間の加圧状態は禁止行為です。加圧値の弱・強に関わらず、短時間に加圧と除圧を繰り返すことが施術の基本であり、そこにこそ安全確保のノウハウが凝縮されています。ここまでお伝えしたように、活性酸素については過剰とも思えるネガティブなイメージが根強く浸透しています。しかし、地球で酸素とともに進化してきた人類には、当然のように適応能力も十分に備わっています。
これはスポーツによる反応においても同じです。たとえ運動初心者であっても、その時の体力から段階的に負荷強度を高めていき、運動量を増やしても耐えられる体力が培われていくわけですし、その過程で活性酸素への対応力も高まっていると考えるのが現在の正しい知見です。それが成り立っていなければ、「トップアスリートほど寿命が短い」という説が成り立ってしまいます。
加圧トレーニングの体に及ぼす悪影響については、発明者である佐藤義昭・医学博士が自身の体を実験台とした当時から現在まで50年以上におよび、実践者は特に問題なく健康状態を保っています。発明初期段階からの試行錯誤をデータとして蓄積しながら、体への安全性を最優先にしつつ加圧効果を引き出すメソッドを構築してきたのですから、加圧トレーニングライセンス取得に関するルールを守って正しい施術が実施されている限り、安心してその効果に浴すことができるのです。
文:IM編集部
提供元・FITNESS LOVE
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