スタートポジションで背中を伸ばすのがポイント
背中の筋肉を収縮させる、これは日常生活のなかではあまり行わない動作です。日常的に行っていない動作の感覚は、なかなかつかみづらいものです。
でも「背中を伸ばす」動作は行っているはずです。背中のトレーニングが苦手な人はスタートポジションで広背筋が伸びたことを確認し、そこから引くようにします。そこで大事なのが握り方です。負荷は指から伝導して、腕を介して背中に伝わります。握り方については、先月号のラット系種目の解説を参照してください。
また、よく間違いがちな動作として「自ら肩甲骨を開いてスタートポジションに戻す」というものがあります。戻すときに自分で肩甲骨を開くと、エキセントリックで一番刺激が強い、おいしいところを逃がしてしまいます。戻すときは極力、「重さに耐えて、そのまま引っ張られる」という動作を心がけます。
背中は自分からは見えない箇所の筋肉なので意識しにくい、という方もいるはずです。そうした場合は、まずは伸ばしたときの感覚に焦点を当てましょう。
ワンハンドorツーハンズ
広背筋は背骨、仙骨、腸骨に起始部、上腕骨の少し内側に停止部があります。トレーニングは筋の走行方向に沿って起始部・停止部を伸展・収縮させるのが基本となるので、広背筋を狙うトレーニングでは肩甲骨を下制して肘を上体に近づける動作を行います。
しかし、一般的な体形の人よりも肩幅が広く、肩甲骨が外側に位置している人は肩甲骨が下制しづらく、広背筋下部、中部に効かせづらい。特にツーハンズの種目では肩が上がりがちになってしまいます。そういった人は、ワンハンド系の種目で補佐してあげればいいでしょう。
ツーハンズとワンハンドでは支点が変わってきます。ツーハンズで行うと支点が体の中心にくるので、前から引くと肩甲骨が後ろに動き、僧帽筋下部に効きやすくなります。
ワンハンドで引くと、支点が中心から横(引いている腕の側)に移り、肩甲骨からではなく肘から、つまり広背筋の停止部から動かしやすくなります。さらには脊柱を軸として上体をひねることができるため、広背筋の形に添って肘を引けます。肩幅が広くて広背筋中部、下部に効かせづらいという人はワンハンドをうまく活用していきましょう。