米国ノースウェスタン大学電気情報工学部のジョサイア・ヘスター助教ら研究チームは、バッテリー不用のゲームボーイを作成しました。
ゲームに必要な電力はソーラーパネルとボタンを押すことで得られるため、外部のバッテリーを全く必要としません。
さらにこのゲームボーイはニンテンドーが1989年に発売した8bitの「ゲームボーイ」ソフトをそのままプレイできるとのこと。
この研究は「長時間ゲームができるようになる」という打算的な目的で行われているように見えますが、実はとっても地球にやさしい研究なのです。
バッテリーが要らないゲームボーイとは?
作成されたゲームボーイは、2つの電力供給源を持っています。
1つは、画面の周囲とボタン下に貼られているソーラーパネルです。太陽の下では持続的にエネルギーを供給してくれます。
2つ目は、ユーザーによるボタン発電です。ユーザーがゲームプレイでボタンを押すごとに、そのエネルギーが利用される仕組みになっています。
さらに電力消費を抑えるためにゲームボーイのハードウェアとソフトウェアのシステムを根本から再設計したとのこと。
しかし現段階ではゲームプレイに永続性はありません。どうしても電力が不足するため、断続的に僅かな時間中断されてしまうのです。
そのため、新ゲームボーイはゲームデータの記憶性能を強化しています。不揮発性メモリ(電源供給なしで記録保持できるメモリ)を使用し、電力回復時に瞬時にデータを復元できるのです。
データは自動保存されるので、従来のゲームボーイのように「セーブを忘れた」という失敗もなくなるでしょう。
バッテリーをなくす意義と限界
現段階では、新ゲームボーイは従来のゲームボーイの性能には及んでいません。
太陽の下にあって中頻度のボタン操作が必要なゲームの場合でも、ゲームプレイ10秒間ごとに1秒未満の僅かな中断が挟まります。
そのため研究者たちは「チェス、ソリティア、テトリスなどの一部のゲームはプレイ可能だが、アクションゲームなどは難しい」と考えています。
またゲームサウンドがないことや太陽光の状態に左右されることもユーザーの没入感を損なわせるものとなっています。
このように不完全な部分が目立ちますが、この取り組みが目指すところは、単純に「ずっとゲームできる」というものではありません。
私たちに欠かせないコンピュータから「コストがかかり、環境に有害で、最終的に埋め立て処分となるバッテリーを無くす」ことにあるのです。
バッテリー不要のゲームボーイが実現すれば、それを応用してコンピュータのバッテリーもなくせるかもしれません。
もちろん、21世紀の最新携帯ゲーム機がバッテリー不用になるまでには遠い道のりがあります。地球の環境問題の改善に役立つのはもっと遠い未来でしょう。
しかし30年前の携帯ゲーム機器を不完全とはいえバッテリーなしにできたのです。これは彼らの目標を達成するための確実な一歩となりました。
バッテリー不用のゲームボーイはUBICOMP2020で発表予定にあり、今後も改善されていくでしょう。
参考文献
northwestern
提供元・ナゾロジー
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