現在、人類は凄まじい勢いでさまざまな人工物を製造し続けています。
12月9日に科学雑誌『nature』で発表された新しい研究では、2020年の年末までに製造される人工物の総重量は地球全体の生物の総重量を追い越すという推定を報告しています。
いずれ人工物の重量は、生物全体の重量を抜くと言われていましたが、2020年はその交差点となる記念の年になるようです。
目次
人工物と自然生物の交差点
新しい地質年代「人新世」が始まっている
人工物と自然生物の交差点
イスラエルのワイツマン科学研究所のチームは、1900年から現在までのすべての人工物の合計質量を計算し、地球上のすべての生物の重量(バイオマス)と比較しました。
ペットボトルからビルや道路を作るコンクリートまで、人類が生産する物質の重量は、1900年代初頭から20年ごとに倍増しています。
そして、森林など自然の中にある植物や生物の重量は減少傾向にあります。
そのため、ある時点で人工物と生物の重量は交差することになりますが、それがチームの推定によれば今年2020年になる可能性が高いのです。

ここでいう生物の重量は、全生物の乾燥状態の重量を指します。
人工物の重量は岩や原油などの天然資源を、どの時点から製造品と見なすかの定義によって結果がばらついてきます。
しかし、現在人類は毎年30ギガトン(300億キログラム)の自然物を人工物へ変換して、本棚から高層マンションまで造り続けています。それを考えると、この定義による曖昧さはすぐに吹っ飛んでしまうでしょう。
新しい地質年代「人新世」が始まっている
現代は地質学的には「完新世」と呼ばれる時代に当たりますが、すでにその完新世は終了しており、人類が地球や地質、生態系に重大な影響を与えたことによる新しい地質年代「人新世」が始まっているという提案があります。
今回の研究は、地球がその新しい地質年代「人新世」に突入していることのさらなる証拠になるだろうと言われています。
「人新世」の正式な始まりは1950年代で、ここから人類の人口と消費の「大加速」が始まったと考えられ、アルミニウム、コンクリート、プラスチックなどの材料の普及と時代が一致しています。

人工物が地球を覆い、それは地球上の生命の重量を超えて地質年代にまで影響を与えるほどになりました。
その交差点となるのが今年だと言われると、年末を迎える今、なんとも感慨深いものがあります。
この事実は人類文明の偉大な発展と進歩の証とも言えるでしょう。
しかし、人間と自然との調和が崩れ始めたことも同時に意味しているのかもしれません。
参考文献
sciencealert
提供元・ナゾロジー
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