バロンズ誌、今回はカバーで2022年で最も活躍した最高経営責任者(CEO)24名を掲げる。17回目となる今回の選定基準は、投資家が今買うべき最高の銘柄や、最も賞賛されている企業である点に重点を置いたという。また、CEOによる足元の行動で会社を力強く成長させ、競争力を引き上げられたかにも、注目。

栄えあるトップ24のCEOには、メディア大手パラマウント・グローバルのボブ・バキシュ氏を始め、配送大手UPSのキャロル・トメ氏、自動車メーカー大手フォードのジム・ファーリー氏などが挙がった。その他の選ばれたCEOと理由など詳細は、本誌をご覧下さい。

バロンズ誌:Fedの利上げ中止と景気後退回避で、米株高へ道筋
(画像=ニューヨーク証券取引所 JANIFEST/iStock、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は堅調な労働市場や商品先物の下落に裏付けられた株底打ちを取り上げる。抄訳は、以下の通り。

力強い雇用と商品先物の下落を受け、米株見通しに明るさ戻る―Stock Outlook Brightens as Jobs Stay Strong and Commodities Prices Decline.

米経済は強靭さを維持し、インフレ率は鈍化しそうだ。このコンビネーションが意味するところは、S&P500が一時20%下落するなど上半期から転じて、米株相場が下半期に堅調に推移するということだろう。

米6月雇用統計は、楽観的な米経済見通しを支援する内容だった。非農業部門就労者数は25万人増の市場予想に反し37.2万人増で、平均時給は前年同月比5.1%上昇し、失業率は3.6%を保った。7月26~27日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、75bpの利上げに踏み切りFF金利誘導目標を2.25~2.5%に設定する見通しだ。米株相場は、年末までにさらに1%ポイントの利上げを織り込む。しかし、足元で商品先物価格が下落し、その他でインフレ鈍化のサインが点灯するなか、その後の中銀の政策は抑制されかねない。

こうした予想を受け、米株相場や米債相場は買い戻され、米10年債利回りは3.1%と6月の3.5%から大幅に低下した。S&P500は6月の安値から6%高、そのうち2%は足元2週間で達成した。

ルーソールド・グループのジム・ポールセン首席投資ストラテジストは、7月26~27日開催のFOMC後に利上げが中止される可能性を見込む一人だ。ポールセン氏いわく「Fedが利上げを中止し景気後退に陥らなければ、米株高への道が開ける」。さらに「S&P500が平均のバリュエーションを下回るなか、小型株は特に割安だ」と付け加える。

S&P500の2022年の予想株価収益率(PER)は17倍で、2023年は16倍程度だ。株式益利回りは6%近くあり、米10年債利回りの2倍にあたる。また、S&P小型株600に至っては、2022年の予想PERは12倍に過ぎない。

チャート:S&P500の株式益利回り、筆者が入手した月足で7月は5.1%

バロンズ誌:Fedの利上げ中止と景気後退回避で、米株高へ道筋
(画像=作成:My Big Apple NY、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

銀行株は景気後退懸念が高まるなか売り圧力に直面し、J.P.モルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカは年初来で25%以上も下落した。米6大金融機関のうち、決算発表を予定するのはシティグループ、モルガン・スタンレー、J.P.モルガン、ウェルズ・ファーゴで、7月18日週はゴールドマン・サックスとバンク・オブ・アメリカが続く。

決算内容は投資銀行業務の低迷に加え住宅ローン手数料の減少など、2021年との比較で全般的に厳しく、収益はあまり期待できない。金利上昇が銀行の債券ポートフォリオに打撃を与え、資本を減少させているおかげで、自社株買いは減少している。しかし、これらの問題はすべて、恐らく銀行の株価の下落で割り引かれよう。

これら大手6行は、2022年の予想利益のわずか7倍から11倍で取引されている。バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックスは簿価に近い価格で取引されており、これが株価の底値であることがしばしば証明されている。株価切り返しの候補であるシティグループは、簿価のわずか半分の価格で取引される有様だ。

最近の増配の結果、ほとんどの銘柄の利回りは3%以上となり、シティグループは4%を超えている。経済的な崩壊を迎えない限り、これらの配当は安全であると思われる。

ウェルズ・ファーゴの銀行担当アナリストとして著名なマイケル・メイヨー氏は最近、ほとんどの大手銀行の業績予想と目標株価を引き下げた一方で強気な見方を維持した。同氏は、純金利収入の増加、経費の抑制、バランスシートの強さを挙げている。大手銀行の中で彼のお気に入りは バンク・オブ・アメリカだ。

――これまで悲観的だったバロンズ誌の名物コラムは、ここにきて強気に転じたようです。その原動力はやはり、こちらで指摘させて頂いたようにFedの積極的な利上げの終了とみられます。物事には始まりがあって終わりがある。インフレ・ファイターとしてのFedの役割は、案外早く終わってもおかしくありません。

米6月雇用統計は確かに堅調な内容でしたが、フルタイムとパートタイムの労働者が減少していた一方で、複数の職を持つ者が増加していた点は気掛かり。少なくとも6月の就労者数の増加は複数の職を持つ者に支えられた側面がある上、米新規失業保険申請件数もじわり増加中で、やはりFedは積極的な利上げを続けていられず、そうなれば米株への底打ち感が高まります。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2022年7月10日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

文・安田 佐和子/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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