ナタデココがピューレ状になった新たな食品素材「ナタピューレ」が、農研機構の研究チームにより開発されました。

ナタピューレは、オオムギなどに含まれる水溶性多糖のβ-グルカンを混ぜたナタデココを破砕することで調製できます。

これを使うことで、粉末状になった農産物に新たな加工特性を与えられ、ペースト状食品の結着性や分散性を高められるとのこと。

この技術により、余剰・規格外農産物(品質に問題はないものの、流通過程で廃棄される農産物)の利用範囲を拡大することで、フードロスの削減が期待されます。

研究の詳細は、日本応用糖質化学会の英文誌『Journal of Applied Glycoscience』に10月4日付けで掲載されています。

目次
新素材「ナタピューレ」の作り方

新素材「ナタピューレ」の作り方

食品の乾燥・粉末化は、その食材の栄養を保持したまま、腐敗や変質を抑え長期保存を可能にする手法です。

また、品質のバラツキをなくし、計量による均一な加工再現ができることから、コムギ、トウモロコシ、大豆などで日々重宝されています。

最近では、フードロス削減のため、流通過程で(形状やサイズが規格外であることが原因となって)廃棄される野菜や果物を粉末化し、長期保存する取り組みが積極的に行われています。

その一方で、粉末化により元の食品が持っていた食感がなくなってしまうため、用途が限定されてしまうのも事実です。

たとえば、キャベツのシャキシャキとした個性的食感は、乾燥・粉末化により著しく低下します。

栄養価は維持されているのに、利用範囲が狭いという点が粉末化の大きな問題でした。

そこで研究チームは、農産物の粉末に対して、食感などの加工特性を与えるための新素材「ナタピューレ」を考案しました。

ナタデココをペースト化した新食品「ナタピューレ」を開発
(画像=ナタデココにβ-グルカンを添加して破砕 / Credit: 農研機構 / ナタデココとβ-グルカンを混合した新食品素材 – 食品粉末に新たな特性を与えて適用範囲を拡大 -(2021),『ナゾロジー』より 引用)

セルロースを主成分とするゲル状食品のナタデココは、破砕するのに高価な装置が必要とされます。

しかし本研究で、ナタデココにコムギ類に多く含まれるβ-グルカン(水溶性多糖)を加えることで、家庭用ミキサーでも簡単に破砕できることを特定しました。

また、β-グルカンの代わりにオオムギの抽出物や、あるいは市販の増粘安定剤(タマリンドシードガムなど)でも同じ効果が得られています。

こうして作られたのが「ナタピューレ」です。

ナタピューレは、適度な繊維質感を持ったピューレ状の素材であり、それを構成するセルロースおよびβ-グルカンは、食物繊維の一種として日常的に食される安全な物質です。

では実際に、ナタピューレにはどのような使い途があるのでしょうか。