ナマコの意外な才能が発覚しました。

オーストラリア・ニューカッスル大学の最新研究によると、一つのサンゴ礁に生息するナマコだけで、年間約7万トンの排便をするとのこと。

これはエッフェル塔5つ分の重量に相当します。

地球規模で考えると、ナマコだけでとんでもない量のウンチが排出されているようです。

研究は、2月2日付けで『Coral Reefs』に掲載されました。

目次

  1. ナマコのウンチはサンゴ礁の大切な肥料に

ナマコのウンチはサンゴ礁の大切な肥料に

本研究では、グレートバリアリーフ南端に位置する、ヘロン島のサンゴ礁(約19平方キロ)を対象に調査されました。

ヘロン島の中心部には、外海から隔てられた浅い水深のラグーンがあります。

研究チームは、ドローンを用いてサンゴ礁の干潟の全エリアを空撮し、映り込んだナマコの数を計上しました。

映像分析では、300万匹以上が確認されています。

ナマコは「年間7万トンのうんち」をすることが判明! エッフェル塔5つ分に匹敵(オーストラリア)
(画像=空撮されたナマコたち / Credit: Vincent Raoult、『ナゾロジー』より 引用)

その後チームは、最も一般的な種のクロナマコ(Holothuria atra)で給餌実験を実施。

その結果、一匹のクロナマコは、1日約38グラム、年間で約14キロの排便をすることがわかりました。

これをヘロン島に分布するナマコに当てはめると、年間7万トンの排便量に達し、エッフェル塔5基分をわずかに上回る重量となります。

ナマコは「年間7万トンのうんち」をすることが判明! エッフェル塔5つ分に匹敵(オーストラリア)
(画像=1エリアで年間7万トンの排便量 / Credit: link.springer、『ナゾロジー』より 引用)

研究主任のヴィンセント・ラウルト氏は「ヘロン島の中心部にあるラグーンは対象外だったので、そこに生息するナマコも含むと、年間の排便量はさらに増える」と指摘します。

また、ナマコのウンチは、周囲の生態系、とくにサンゴ礁の健康にとって重要な肥料です。

ナマコは海底に落ちている藻類や小さな海洋生物を食し、消化の過程でこれらが分解され、一緒に飲み込んだ砂とともにウンチとして排泄します。

このウンチには、サンゴの形成に欠かせない炭酸カルシウムや、成長を促進させるアンモニアが豊富に含まれています。

さらに、ナマコのウンチは海水の酸性度を低める効果があり、サンゴが炭酸カルシウムを形成するのに有用です。

ナマコは「年間7万トンのうんち」をすることが判明! エッフェル塔5つ分に匹敵(オーストラリア)
(画像=ナマコのウンチは海の肥料 / Credit: Southern Islander Dive Tours、『ナゾロジー』より 引用)

それから、ナマコはエサを探すために海底の堆積物をひっくり返し、そこに埋まっていた沈殿物(栄養素)を海中に解き放ちます。

もしナマコがいなければ、これらの栄養素は海底に埋もれたまま、生態系の役に立つことはありません。

しかし現在、ナマコの個体数は、海水汚染や乱獲により減少の一途をたどっています。

すでに7種が絶滅危機に瀕しており、ナマコがいなくなるとサンゴ礁もその煽りを受けるでしょう。

サンゴ礁は、海水のCO2濃度調節を請け負う上に、多くの生き物のすみかや産卵場所として「海のオアシス」とも称されます。

サンゴ礁を守るためにも、ナマコのウンチは必要不可欠なのです。

参考文献
Sea cucumbers pinch out ‘5 Eiffel Towers worth’ of poop per reef, per year
Drones reveal importance of sea cucumber poop in protecting coral reefs

元論文
Putting sea cucumbers on the map: projected holothurian bioturbation rates on a coral reef scale

提供元・ナゾロジー

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