執拗な報道に対し、訴訟結果を報じる記事の貧弱さ
高裁もその名誉棄損を認定したほどの“記事”ですが、キャンペーン期間(6月11日から11月8日の5か月弱)で発信した記事は通算60本、文字数総合計は67,121文字になりました。結局、何ら得るところのない、一部議員が騒いだだけの迷惑報道でした。
一方、東京高等裁判所における今回の判決について毎日新聞自身が報じた記事は、たったの2本(※)、合計でも1,307文字でした。これは誹謗中傷キャンペーンの67,121文字に対して1.9%に過ぎません。紙面では21面に、目立たないように掲載しております。これが報道機関というものなのでしょうか。
※ 毎日新聞が報じた東京高裁判決
[ 2022年7月4日 ]特区報道訴訟、本紙が逆転敗訴 東京高裁判決(653文字)
[ 2022年7月5日 ]特区報道訴訟で毎日新聞が逆転敗訴 東京高裁判決(654文字)
おわりに
原氏が被った迷惑は、わずか220万円で償われるようなものではありません。心理的に受けた被害は計測不能であり、毎日新聞が行った行為の道徳的な“罪深さ”は言葉では表現しきれません。人によっては取り返しのつかない事態に発展しかねないこのような個人の誹謗中傷は、野蛮な行為だと考えます。
現代においてもいまだに行われる、マスメディアによる残酷な“私刑”(メディアリンチ)はしかし、それを抑止する手法がありません。司法の判断は、社会の実情(例えば、「記事はほとんど精読されず、多くの人は見出しの印象で判断を形成する」など)を十分反映しているとは思えません。今の法体系では、メディアが世にまき散らす“呪詛”を抑止することはほとんど不可能です。更に、一度受けた「心の傷」を癒してくれることもありません。
賢い人であれば、個別メディアの批判となる本稿のような見解を発信することも控えるでしょう。メディアからの報復が恐ろしいからです。しかし私は十分愚かなので世に問うてしまいますが、原氏の無念は言うまでもなく、このような状況を放置することは、次世代へ禍根を先送りすることにもなるので見過ごせません。
しかしこの理不尽な状況を注視してくれる有力者もいました。(編集部注:この記事は7月7日に書かれたものです)
みなさんは、どう思いますか。
文・田村 和広/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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