完璧な背中を完成させるには、幅だけでなく十分な厚みも必要だろう。厚みをもたらす基本種目にはデッドリフトがあるわけだが、この種目は特に慎重に行ってほしい。正しく行えば大きな効果が得られるが、自己流だったり、不適切なフォームで行ったりすれば、結果が得られないどころかケガを負う可能性もある。デッドリフトでは高重量が扱える。その理由はより多くの筋肉が動作に参加するため、大きな出力が可能だからだ。しかもデッドリフトに関与する筋肉は身体の中の主要な筋群で、もともとサイズの大きい部位だ。そのため、デッドリフトをしっかり行うと、全身の筋量を効率よく増やすことができるのである。デッドリフトは下半身だけでなく背中への刺激も強く、特に厚みを作るために大きな効果を発揮してくれる。脚の関与を最小限にとどめて、背中をメインにしたデッドリフトを行うなら、パワーラックを使うといいだろう。スネの中央部あたりの高さにバーベルが来るように左右のセーフティーバーをセットすることで、少し高い位置からバーを引くことができる。また、ワイドグリップでバーを握るようにすると、背中の上部への効きを強めることができる。
無理な高重量は使わない
背中の厚みが不足しているならロウイング系の種目を中心にしよう。普段からロウイング種目を欠かさず行っているのに背中の厚みが足りないという人は、使用重量が重すぎる可能性がある。実際、多くのトレーニーが重さにこだわり、フォームが台無しになってしまっているのをよく見かける。崩れたフォームでは、背中に得られるはずの刺激が全身のあちこちに分散されてしまい、どの部位の種目なのか分からなくなってしまう。
例えばミスターオリンピアに8度も輝いたリー・ヘイニーは、バーベルロウでは100㎏以内の重量しか用いなかった。また、ワンハンドロウでは31・8㎏のダンベルを使い、それ以上重いものを使うことはほとんどなかった。実際、その程度の重量ではインスタ映えもしないし、周りのメンバーを驚かせることもできないだろう。しかし、何のために私たちはジムに行っているのかをもう一度考えてほしい。仲間を驚かせたり、威圧することが目的ではないはずだ。ゴールはただひとつ、今よりかっこいい身体、理想の肉体を作るためにジムに行っているのである。
教科書通りのフォームを行う
ヘイニーはどの種目も教科書どおりのフォームで行っていた。だから、彼が選択した種目は対象筋を確実に刺激し、確実な筋発達につながったのだ。
例えばヘイニーが行っていたベントオーバー・バーベルロウは見事な手本となるやり方だった。ウエストから上体を前屈させ、動作中、上体は床面と水平になるように保たれた。ところが、最近のトレーニーたちを見ると、上体が直立してしまっている人をよく見かける。まるでスナッチでもやっているかのようだ。しかも、腹にバーをぶつける勢いで引き上げ、床に落としてしまいそうなスピードで下ろしている。このようなやり方は危険だし、ケガのリスクを高めてしまう。仮にケガを免れたとしても、どこの部位のための動作なのかまったく分からない。
特定の部位に確実に効かせたいなら高重量は不要だ。ベントオーバー・バーベルロウもTバーロウも、ウエストから上体を前屈させ、動作中、上体は床面に対して水平に保つように心がけよう。