オオニベがカレーに変身?
四国と九州の間にある海「豊後水道」の愛媛県側は、古くから宇和海と呼ばれています。リアス式海岸が広がり漁場に恵まれたこの海では様々な魚が取れますが、そのなかの「とある未利用魚」にいま脚光があたっています。
その魚とは「オオニベ」。大きく成長する魚ながら、宇和海沿岸では未利用魚となっているこの魚に付加価値を付けようと、地元である宇和島市の水産高校の生徒が奮闘しています。
彼らはカレーの全国チェーン店を経営する企業とコラボレーションし、メニューを開発。その名は「手仕込みニベコロカレー」で、炒めたニベをほぐして作ったクリームコロッケがトッピングに乗っています。
こちらのメニューは7月末まで販売されているとのことです。(『宇和島水産高生が「カレー」開発 未利用魚オオニベを活用 CoCo壱番屋とタッグ(愛媛)』愛媛新聞 2022.6.12)
オオニベとはどんな魚か
オオニベは「大きいニベ」という意味で、ややマニアックながら漁業上重要な魚種を多く含む「ニベ科」の一種です。
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高級すり身原料としてかまぼこ作りなどに欠かせないシログチや、惣菜魚として西日本で一般的なニベなどが近い仲間となります。
オオニベはニベ科の中でもとくに大きくなるもので、全長は1mを遥かに超える大型魚。外洋性の魚で魚食性が強く、ルアー釣りのターゲットとしては人気がありますが、それと比べると食用としての知名度はかなり低いと言わざるをえないでしょう。
今後の活用に期待
しかし実はこのオオニベ、九州南部ではそれなりの需要がある食用魚です。当地では「南すずき」の呼び名も一般的で、成長が早く大型になるので養殖も行われています。
それがなぜ宇和海では未利用魚なのかというと、これまで漁獲がほぼなかったから。もともと南方系の魚であったオオニベですが、海洋温暖化の影響もあり、近年生息域が北上しています。宇和海はもちろん、最近ではかなり北の相模湾などでも漁獲が増えています。
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オオニベは大型魚ながら脂があまり乗らず、味としてはややさっぱりしています。ただ癖のない白身で様々な調理法が可能ということもあり、食用魚として扱いやすい魚と言えます。
大型の割に価格も安く、フィレなどの需要も見込めるので、今後一般的な食用魚となっていくのではないかと思われます。すでに養殖物が豊洲市場でも普通のものとなりつつあり、未利用魚という印象も徐々になくなっていくでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
提供元・TSURINEWS
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