米国農務省(略称: USDA)の一部である森林製品研究所(略称: FPL)のジャンヨン・スー氏ら研究チームは科学誌『Journal of Advanced Functional Materials』で、ガラスのように透明な木材を合成したと発表しました。

彼らの論文によると、この透明な木材は窓として活用でき、従来のガラスと比べて高い耐久性と費用対効果が望めるとのことです。

目次
ガラスのように透明な木材
「透明木材」は将来の窓として有望

ガラスのように透明な木材

「ガラスのように透明な木材」は、成長の早いバルサの木が原料となっています。

バルサの木の特徴はその密度にあります。この木の密度は約140kg/m³であり、一般の木材の3分の1しかありません。

そのためバルサ木材は非常に軽く柔らかいことで有名です。また重量に比べて強度が大きいため、浮きや救命胴衣、模型、航空機などに利用されてきました。

「ガラスのような木材」をつくることに成功!未来の窓は木でできているかも
(画像=透明木材の合成手順 / Credit:USDA Forest Service、『ナゾロジー』より 引用)

研究チームは、まずこのバルサ木材を特殊な漂白剤で酸化。そして次にポリビニルアルコール(略称: PVA)と呼ばれる合成樹脂を浸透させることで、木材を透明化させることに成功しました。

新しい「透明木材」の構造は天然木材構造とPVAから成り立っているため、ガラスよりもはるかに耐久性があり、軽量化されています。さらにガラスよりも強い衝撃に耐えることができますし、ガラスのように粉々になる代わりに、曲がったり裂けたりするようです。

「透明木材」は将来の窓として有望

「ガラスのような木材」をつくることに成功!未来の窓は木でできているかも
(画像=(左)バルサ木材の走査型電子顕微鏡画像 , (右)透明木材 / Credit:USDA Forest Service、『ナゾロジー』より 引用)

透明木材は将来の窓材料として注目されています。

従来の窓ガラスは世界中に普及しているものの、経済的にも環境的にも最善とは言えません。

熱はガラスを通して簡単に伝わってしまうため、寒い時期には熱が屋外に逃げ、暑い時期には屋内に熱が流れ込みます。当然、エネルギーコストは高くなるでしょう。

また建築用ガラスの生産では大量の二酸化炭素を排出してしまうため、環境に優しくありません。ガラス製造業の年間排出量は25,000トンにもなるのです。

「ガラスのような木材」をつくることに成功!未来の窓は木でできているかも
(画像=透明木材の窓は光を通し熱を逃がさない / Credit:USDA Forest Service、『ナゾロジー』より 引用)

しかし、新しく合成された「透明木材」はガラスの約5倍の熱効率があるため、エネルギーコストを大きく削減できます。

また再生可能資源から作られているため、二酸化炭素排出量も低いのです。

さらに業界で採用されている既存の製造装置との互換性があるため、透明木材製造への移行は容易でしょう。

このように透明木材は消費者・製造業・環境すべてメリットがあります。まさに窓ガラスの新時代を築くにふさわしい発明と言えるのです。今後の進展に期待できるでしょう。

提供元・ナゾロジー

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