皮膚に文字や絵を彫る「入れ墨」または「タトゥー」は、消すことのできない恒久的なファッションアートです。
ところが、イタリア技術研究所(略称:IIT)に所属するVirgilio Mattoli氏ら研究チームは、気軽に貼り付けて剥がすことができる「スマートタトゥー」を開発しました。
研究によると、新しいスマートタトゥーは発光し、貼り付けた人の体調を感知するなど、様々な用途に利用可能のとことです。
詳細は、1月25日付けの科学誌『Advanced Electronic Materials』に掲載されました。
シールみたいに剥がせる発光タトゥー
新しいスマートタトゥーには有機発光ダイオード(略称:OLED)が使用されています。
これはエネルギー効率が非常に良い電球のようなもので、これまでテレビやスマホの画面に利用されてきました。
タトゥーデバイスの厚さは合計2.3μm(人間の髪の30分の1の厚さ)ですが、肉眼で十分確認できる明るさで緑色に発光します。
貼り付ける方法は、水転写するタトゥーシールと同じです。
スマートタトゥーは紙の上に製造されますが、それを皮膚に押し付けて水で軽くたたくだけで転写されるとのこと。
わずか8ボルトの電力で発光するため、スマートタトゥーを身に着けた人が感電することはありません。
また水と石鹸で簡単に剥がすことができ、低コストというメリットもあります。
気軽に着脱できる発光タトゥーなので、ファッションとして楽しめるでしょう。
しかしスマートタトゥーの用途はファッションだけに限りません。実はこのデバイス、将来的に大きな可能性を秘めたものだったのです。
スマートタトゥーは健康管理や食品管理にも役立つ
発表された論文によると、スマートタトゥーは皮膚だけでなく、ガラス板やペットボトル、オレンジ、紙パッケージにも適用できたとのこと。
そして貼り付けた対象から様々な情報を得ることができます。
例えば、汗センサーと組み合わせることで脱水状態を知らせることができます。
スポーツ選手が脱水状態に陥ったときに、タトゥーが発光して給水の必要性を教えてくれるのです。
また日焼けしたくない人が太陽の光を避けるために利用することも可能。スマートタトゥーの発光が、「このままでは日焼けしてしまいすよ」と教えてくれるのです。
さらに食品パッケージや果物にスマートタトゥーを入れることで、賞味期限を知らせることも可能になります。
加えてスマートタトゥーは患者の健康管理に役立つかもしれません。患者の状態に変化があったときに発光で警告してくれるのです。
また逆向きに貼ることで、光を利用したがん細胞治療に適用できるかもしれないと言われています。
ただし研究はまだ初期段階です。スマートタトゥーをさまざまな用途に応用するには、より多くの研究を行っていかなければいけません。
今後研究チームは、空気接触によるOLED劣化の防止やバッテリー源の確保を課題として研究を続けていく予定です。
参考文献
Light-emitting tattoo engineered for the first time
元論文
Ultrathin, Ultra‐Conformable, and Free‐Standing Tattooable Organic Light‐Emitting Diodes
提供元・ナゾロジー
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