アフリカに生息するクレステッドラット(学名:Lophiomys imhausi)は、フサフサとした尾を持つヤマアラシに似たネズミです。
アメリカ・ユタ大学生物科学部のサラ・ウェインスタイン氏ら研究チームは、11月17日付けの科学誌『Journal of Mammalogy』で、クレステッドラットが人を殺せるほどの毒性を有毒植物から獲得していたと発表。
その発表によると、毒性をもつ哺乳類は他にも存在しますが、クレステッドラットは外部から毒性を獲得する唯一のネズミとのこと。
目次
有毒な木をかじって毒性を得るネズミ
毒を身にまとうネズミの意外な一面
有毒な木をかじって毒性を得るネズミ
「アフリカのネズミが有毒な木から毒性を得ている」という情報は、地元の人々には以前から知られていたものでした。
研究チームはこの情報の真偽を確かめて正確に記録するために、25匹のクレステッドラットを捕獲。
そしてモーションカメラを使用して1000時間近く、ネズミの行動を記録することにしました。
その結果、そのうちの10匹がアフリカにある有毒の木「Acokanthera schimperi(キョウチクトウ科の一種)」の樹皮を噛み砕いて、被毛に塗り付けていたと判明。
このAcokanthera schimperiには強い毒性が含まれており、毒矢などにも使用されます。
これと同様の化学成分はオオヒキガエルにもみられるとのこと。
しかも、たった数ミリグラムで人間を殺したり、ゾウを失神させたりできるほど強力なのです。
さらに研究チームによると、「ネズミたちのこの行動は意図的なものであり、毒性が自分たちを保護していると認識できているようだ」とのこと。
またクレステッドラットたちは有毒の木を噛みますが、自分たちは影響を受けないことも判明しました。
毒を身にまとうネズミの意外な一面
クレステッドラットは個体数の少ない希少動物というわけではありません。
しかし、人前に姿を見せることは少なく、捕獲するのも困難。そのため彼らに関する研究データは非常に少ないのです。
研究チームも当初30を超える罠を仕掛けましたが、捕獲に成功したのはそのうちの2つだけでした。
そして実際、研究に必要な数を捕獲するために数か月も費やしたとのこと。
しかしチームの苦労は報われました。毒性を獲得する方法を正確に記録することができ、これまでに知られていなかった他の情報も得られたのです。
例えば、クレステッドラットたちはこれまで単独で行動する動物だと考えられていましたが、実は一夫一婦制でありパートナーとペアで行動するという特徴が明らかになりました。
実際に2匹を囲いの中に入れると、お互いに喉を鳴らし毛繕いし合う様子も観察されたのです。
今後研究チームは、クレステッドラットの行動をより理解するためにケニアでのフィールドワークを継続する予定です。
彼らはまた「クレステッドラットが毒素に耐えることのできる理由を探っていきたい」とも述べています。
参考文献
zmescience
提供元・ナゾロジー
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