G20外相会議が映し出す対立軸
G20外相会議がインドネシアで開催されましたが、同国のジョコ大統領がロシアを招待したことが話題になっていました。最近の国際会議ではロシア代表が参加、発言する際、一部の代表が退席するという「無言の抵抗」を示していました。今回の会合でも前夜の非公式夕食会では林外相が夕食会をボイコットしていますが、本格会議では「無言」から「激しいバトル」へと180度戦略が変わってきています。
海外で長く生活してきた者として言わせてもらうと「無言の抵抗」は欧米のしきたりとしてはあまりメジャーではありません。言うことは言う、討論、議論、バトルといった激しい言葉の応酬こそが本質的な会議のスタイルです。例えば英国議会のシーンをテレビでご覧になった方は多いと思いますが、長椅子に座りきれない議員は床に座り、立ち見をし、与野党が至近距離で口角泡を飛ばすとはこのことで、激しくやり合います。
G20が地球上のGDPの90%、貿易総額の80%、総人口の2/3、土地面積が1/2という巨大組織であり、権威主義、民主主義、第三国の三極が何かの合意点を見つけることは妥協の産物でしかないのですが、各国を代表する外相の立場としては能力を問われることになります。
となれば自陣の主張をいかに正論のように述べ、賛同を得るのか、というパフォーマンス合戦になり、対立軸による国家の色が先にありきで決して実りある会議にならないのです。事実、今回のG20は散々でした。ならば成果を期待せず、コミュニケーションの場として割り切り、対話を通じた長期的な解決策を模索する会議と考えた方がよさそうです。無駄な努力にならないことを祈ります。
後記
先週、KDDIが大規模通信障害を起こしたばかりですが、カナダの金曜日東部時間早朝、ほぼ全土で通信障害が発生、携帯が使えない、銀行の送金ができない、店舗のデビットカードの処理ができない、救急に連絡できないなどその衝撃は極めて大きいものになりました。
不思議なのは東部の大手通信会社で起きたトラブルが提携先の他社の通信機能にも影響し、信じられないほどのインフラの脆弱性が当地でも起きました。これを見ると「データの時代」にあまり頼れないと思ったのは私だけではないでしょう。
では今日はこのぐらいで。
文・岡本 裕明
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年7月10日の記事より転載させていただきました。
文・岡本 裕明/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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