「スマホが振動した」と思ったら、着信も通知も来ていなかった。
きっと、ほとんどの人が同様の経験をしたことがあるでしょう。
実は、この現象には「幻想振動症候群(げんそうしんどうしょうこうぐん)」という名称がついており、スマホが欠かせない現代社会特有の症状なのだとか。
アメリカ・ジョージア工科大学(Georgia Tech)に所属する公共政策学者ロバート・ローゼンバーガー氏は、ジョージア工科大学のYouTubeチャンネルの動画内で、幻想振動症候群の原因について解説しています。
「幻想振動症候群」はスマホに訓練された脳で起こる
幻想振動症候群(またはファントム・バイブレーション症候群)とは、スマホが振動したと錯覚してしまう現象です。
ほとんどの人は、これを体験しても深く気にすることはありません。
しかし大学生たちを対象とした2012年の調査では、約90%がこの錯覚を経験したことがあると答えました。
しかもそのうちの大多数が、2週間に1度は錯覚していたとのこと。
それから10年経過した現在でも、同じ割合かそれ以上の人々が、幻想振動症候群になっていると考えられます。
では、なぜこのような現象が生じるのでしょうか?
ローゼンバーガー氏は、次のように説明しています。
「幻想振動症候群は、身体的な習慣として理解すると良いでしょう。
例えば、普段から眼鏡をかけている人は、ちょっと視界が歪んで感じると、眼鏡をかけていないときでも、指で押し上げて位置を調節する動きをついつい取ってしまいます。
ポケットの中のスマホもこれと同じです。
スマホの利用に体が慣れると、私たちはスマホの存在を体の一部と感じるようになります。
このとき、あなたはスマホの振動をすぐに大事な連絡として認識するよう訓練された状態になっているのです」
そして「スマホに訓練された脳」は、似たような感覚を誤認しやすくなるようです。
そのため、ポケットの中でスマホの位置がずれるだけで、そのわずかな揺れから、私たちは「スマホに通知がきた」と錯覚してしまいます。
スマホの振動と似たような、ポケット周辺でムズムズとしたトリガー刺激を感じれば、私たちはスマホを持っていなくても通知が来たと勘違いしてしまうのです。
ですから、幻想振動症候群を経験することは、別に異常なことではありません。
ただ頻繁にこの症状が出たり、それによって心臓が締め付けられるような感覚を味わったりしているのであれば、それには心的ストレスが関係していると思われます。
つらい仕事や人間関係によって、「すぐに電話に出なければいけない」という強迫観念にとらわれている恐れがあるのです。
脳が「スマホに訓練された状態」を超えて、「脅迫・強制された状態」になっているなら、なるべく早く専門家に相談すべきでしょう。
参考文献
Your smartphone is making you hallucinate
提供元・ナゾロジー
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