生きとし生けるもの皆ウンチをしますが、ウォンバットはキューブ型という一風変わったウンチをします。

別にお尻の穴が四角いわけではありません。

この問題は生物学の大きな謎として、今日まで研究が続けられています。

そして今回、国際研究チームの最新調査により、ついにその全貌が明らかになってきました。

四角いウンチの原因は、ウォンバットがもつ腸のイレギュラーな動きにあったようです。

研究は、1月27日付けで『Soft Matter』に掲載されています。

目次

  1. ウンチを固める場所と、四角形にする場所が別々だった!

ウンチを固める場所と、四角形にする場所が別々だった!

ウォンバットは、オーストラリアに生息する夜行性の哺乳類で、昼間を地下トンネルで過ごし、夜にエサを求めて出歩きます。

一晩に100個近くのウンチをし、その大半が四角いキューブ型です。

「どうして丸い肛門から四角いウンチが出るのか。」

この謎を解き明かすべく、2018年に、車にはねられて亡くなったウォンバットの遺骸を解剖し、腸の構造が調べられました。

その結果、腸内に、周囲の組織とくらべて伸縮性の強い溝状の構造が2つ見つかったのですが、その機能まではわかっていません。

ウォンバットが「四角いウンチ」を作るメカニズムが明らかに! 腸の動きがふつうと違っていた
(画像=ウォンバット / Credit: YANG ET AL. 2021,『ナゾロジー』より 引用)

しかし今回の研究で、さらに2体のウォンバットを解剖することで、腸内の筋組織層に、さまざまな厚みや硬さをもつ領域の発見に成功しました。

チームは、それをもとに2Dの数学モデルを作成し、それらの領域が消化のリズムに合わせて伸縮する様子をシミュレートしています。

すると、ウォンバットの腸は、他の哺乳類と動きがまったく異なることが判明しました。

多くの哺乳類に見られる腸の動きは、筋組織による伝播性の収縮波があらゆる方向で一貫していますが、ウォンバットではそれが不規則だったのです。

筋組織の硬い場所では、収縮スピードが速く、便を瞬時に固めます。

一方で、筋組織の柔らかい場所では、ゆっくりとした収縮スピードで固めた便をキューブ型に整形していました。

シミュレーションの結果によると、便が四角形にされるのは腸の終わり17%の範囲でした。

ウォンバットが「四角いウンチ」を作るメカニズムが明らかに! 腸の動きがふつうと違っていた
(画像=四角いウンチは縄張りのサインか? / Credit: University Of Tasmania,『ナゾロジー』より 引用)

ウォンバットは食べたものの消化に2週間以上を要し、水分や栄養素のほとんどをそこから抽出します。

そのため、排出されたウンチは水分がなく、極度に圧縮されています。

この傾向は野生下ほど強く、水が簡単に手に入る飼育下では、ウンチがキューブ型にならないことも多いそうです。

一方で、ウォンバットが四角形のウンチをする理由については、いまだ断定できる答えがありません。

現在の有力な説は、ウォンバットが、その縄張り意識の強さから、一種のサインとして四角いウンチを置くというものです。

ウォンバットは、不安定な岩や丸太を縄張りにすることが多く、四角いウンチだとそこから転がり落ちることがありません。

また、自然界に見られない形なので、一目でウォンバットの縄張りだと判断できます。

ただこれはあくまでも仮説のレベルであり、真の答えを知るのはウォンバットのみでしょう。


参考文献

How do wombats poop cubes? Scientists get to the bottom of the mystery

Wombat research that’s not to be sniffed at

元論文

Intestines of non-uniform stiffness mold the corners of wombat feces


提供元・ナゾロジー

【関連記事】
ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功