長いあくびは、退屈さのしるしではないようです。

オランダ・ユトレヒト大学、アメリカ・ニューヨーク州立大学の研究チームは、100種以上の哺乳類と鳥類を対象に、あくびと脳サイズの関連性を調査。

その結果、あくびが長いほど、脳のサイズが大きく、神経細胞の数が多いことが示されました。

研究は、5月6日付けで『Communications Biology』に掲載されています。

目次
あくびの役割は「脳のクールダウン」?
あくびは集中力を回復させている証拠?

あくびの役割は「脳のクールダウン」?

私たちは1日に5〜15回ほどあくびをしますが、この奇妙な行動を取るのはヒトだけではありません。

あくびは多くの脊椎動物で確認されており、なぜこの行動が進化したのか、専門家らは疑問に思っています。

一説に、あくびは血液に酸素を供給する役割があると言われますが、これは間違いです。

そうではなく、あくびには脳を冷やす機能があることが近年の研究で分かってきています。

研究主任のアンドリュー・ギャラップ氏によると、あくびは「冷たい空気の吸入と口腔周囲の筋肉のストレッチを同時に行うことで、脳への冷たい血液の流れを増加させ、体温調節をしている」とのこと。

あくびの長い生き物ほど、脳が大きいと判明!体のサイズは関係なし
(画像=あくびは脳を冷やすため? / Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より 引用)

すでにいくつかの研究で、あくびをすると脳の温度が下がり、周囲の室温(気温)によってあくびの頻度が決まることも示されています。

また、保冷剤を頭や首に当てると、脳が冷やされて、あくびがほとんど出なくなるのです。

あくびが脳を冷やすという説は、今回の研究の結果を支持しています。

つまり、脳が大きいほど、あるいは脳の働きが活発であるほど、より多くの冷却が必要となるのです。

哺乳類を対象とした先行研究でも、大きな脳を持つ動物はあくびが長くなることが示唆されています。

研究チームは今回、これがどれほど普遍的なものかを決定するため、哺乳類の他に鳥類も対象としました。

あくびは集中力を回復させている証拠?

チームは、55種の哺乳類と46種の鳥類を撮影して、1250回以上のあくび映像を収集しました。

同チームのヨルグ・マッセン氏は「カメラを持って動物園を回り、それぞれの動物があくびをするのを檻の側で待ち構えていました。

かなりの長丁場で、忍耐力を要しました」と言います。

それから、YouTubeやFacebookで公開されている動物のあくびも可能な限り収集し、あくびの持続時間と、脳のサイズおよび神経細胞の数との関連性を調べました。

その結果、体のサイズとは関係なく、脳が大きくて神経細胞が多いほど、あくびの時間は長くなっていたのです。

あくびの長い生き物ほど、脳が大きいと判明!体のサイズは関係なし
(画像=脳が大きいほど、あくびは長い / Credit: Jorg J. M. Massen et al., Communications Biology(2021)、『ナゾロジー』より 引用)

さらに、鳥類よりも哺乳類の方が、あくびの持続時間が長いことが分かりました。

これは鳥の方が体内の中心温度が高いことで説明できます。

要するに、鳥の体温は周囲との温度差が哺乳類より大きいため、鳥の血液は周囲の空気によって冷やされやすく、短いあくびで十分なのです。

あくびの長い生き物ほど、脳が大きいと判明!体のサイズは関係なし
(画像=鳥類はあくびが短い / Credit: Faculty of Science Utrecht University/youtube、『ナゾロジー』より 引用)

脳は適切な温度で最もよく働き、何らかの理由で脳の温度が上がりすぎると、注意力や集中力が低下してしまいます。

この対抗策として、哺乳類と鳥類はあくびを進化させたと考えられるのです。

マッセン氏は「あくびは失礼な行動というより、体が集中力を維持しようと本能的に努力している証拠なのです」と述べています。


参考文献

The longer the yawn, the bigger the brain

元論文

Brain size and neuron numbers drive differences in yawn duration across mammals and birds


提供元・ナゾロジー

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