スローロリスは、見た目の愛らしさとは裏腹に、唯一の毒を持つ霊長類として知られます。
一方で、どんな用途に毒を使うのかは詳しく分かっていませんでした。
しかし、オックスフォード・ブルックス大学の研究により、スローロリスは主に、捕食者に対する保護用としてではなく、同種間での争いに毒を使っていることが判明しました。
研究は、10月19日付けで『Current Biology』に報告されています。
目次
スローロリスの毒は肉を溶かすほど強力
同種を襲うのはテリトリーを守るため
スローロリスの毒は肉を溶かすほど強力
研究チームは、野性下のスローロリスがどのような毒を使うか調べるため、インドネシアのジャワ島に生息する群れを8年間にわたり観察しました。
82匹のスローロリスにGPSを装着して、数ヶ月ごとに健康状態をチェック、追跡調査は合計で7000時間におよんでいます。
その結果、定期的な健康診断の度に、全体の約20%が別のスローロリスに噛まれた傷跡を持っていました。
スローロリスは、脇の下にある腺から有毒な油を分泌し、それを舐めとって口の中で唾液と混ぜ、毒液を調合します。毒は歯の溝に溜めこまれ、相手に噛み付いたと同時に注入します。
スローロリスの毒は、噛んだ部分を腐らせるほど強力で、調査した中には、頭の半分が溶けてしまった個体も見られました(画像、閲覧注意)。
同種を襲うのはテリトリーを守るため
最終的に、追跡調査をした82匹のうち、オスの2分の1とメスの3分の1に同種による咬み傷が確認されました。また、年老いた個体よりも若い個体により多くの咬み傷が見つかっています。
研究主任のアンナ・ネカリス氏は「スローロリスは、縄張り意識がとても強い生物であり、自分のテリトリーを守るために同種にも噛み付くのでしょう」と指摘します。
さらに、性別によっても噛み付く目的が違うようで、オスは主にパートナーとテリトリーを守るために、メスは自分の子どもと食料を守るために争っていました。
同種間で毒を用いた争いをする哺乳類は珍しく、スローロリスの他に、コウモリとトガリネズミ、カモノハシ、ソレノドンしかいません。
しかし、オスメス両方が時期に関係なく(カモノハシは交尾期にオス同士が毒を使って争う)、同種間で毒を使うのはスローロリスくらいだといいます。
これまでの見解では、天敵から身を守る目的や身体に毒を塗って寄生虫除けにする目的などが主な用途とされていましたが、意外にも仲間に対して牙を剥く方が主流なようです。
提供元・ナゾロジー
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