マシンや両足での安定した状態での筋力トレーニングで得た筋力は、スポーツの際に抑制がかかることが多く、見た目の割には筋力が発揮されず「役に立たない、見かけ倒し、邪魔」などと言われてしまうことになります。それはなぜか?
●使えない筋肉の原因は抑制?
ある特定の筋肉が「使えない筋肉」と言われる原因は「抑制」にあります。 レッグプレスで得た筋肉が筋力を存分に発揮するには、レッグプレスの環境が必要になります。実際、スポーツや日常でレッグプレスのように、背中と殿部が固定されており、両足で力を発揮する局面はほぼありません。レッグプレスで高重量が扱えるのは、体が固定されている面積(基底支持面)が大きく、バランスをとる必要がないからであると言えます。
では、スポーツのように片足で接地する際に、レッグプレスの際に発揮されるような大きな筋力で接地するとどうなるでしょう? この場合、大殿筋や大腿四頭筋に対してバランスを取る筋力が弱すぎる状態なので、膝や足首に多大な負荷がかかり、捻挫などのケガを引き起こす可能性が高くなります。 ここで脳は、ケガを予防するために無意識の内に大殿筋や大腿四頭筋に送る、神経インパルスの量を抑えて、発揮できる筋力を弱めてしまいます。これが「抑制」です。
基底支持面が大きいマシンや両足での安定した状態での筋力トレーニングで得た筋力は、スポーツの際に抑制がかかることが多く、見た目の割には筋力が発揮されず、「役に立たない、見かけ倒し、邪魔」などと言われてしまうことになります。 抑制がかからないようにするには、不安定な状況でトレーニングを行う必要がありますが、この場合バランスボールに乗るよりは、実際のスポーツに近づけるために、地面で、片足で行うのが良いと思います。
例えば今回ご紹介する「ピストルスクワット」を行うときは、次のような順番で筋力が発揮される必要があります。
①体幹が固定される
②中殿筋と内転筋で大腿を両側から安定させ、バランスを取る
③大殿筋と大腿四頭筋で力を発揮する以上のプロセスで、筋力を発揮していくことで、抑制がかからない状態をつくることが可能になります。
では、抑制がかからないようにするためのエクササイズの一つとしてお勧めしたい、ピストルスクワットについて解説していきましょう。
●ピストルスクワットの効用
・大腿四頭筋、大殿筋の強化
・股関節の安定性、可動性の向上
●ピストルスクワットの行い方(写真1−1、1−2)
ステップ台などの高さの台の上に片足で立ちます。そこから反対の足を前方に突き出し、スクワットを行います。このときできるだけ腰が丸くなりすぎないように気をつけます(深くおろすと多少骨盤の後傾が入ります)。
●リグレッション(原点回帰)とプログレッション(エクササイズの発展)
◎ピストルスクワットのリグレッション
①シングルレッグスクワット(写真2 −1)
足を前に出さないで、膝を曲げた状態 で行います。骨盤が動かないように気 をつけながら行います。足を下ろすことで体が硬い人でも行えるようになります。
◎ピストルスクワットのプログレッション
①カウンターウエイトを用いたピストルスクワット(写真2 −2)
両手にダンベルを持ち、ダンベルを前に出しながら、カウンターウエイトとして使いながらスクワットを行います。 カウンターウエイトを用いることにより、負荷は増しますがバランスは取りやすくなります。
何かしらスポーツを行っている人は、片足での筋力発揮を向上させておくことは、そのスポーツを行うことに対して恩恵を受けることができます。筋肥大を行うことだけが目的の場合は、片足で筋力を発揮させるようなトレーニングは必要ないので、あえて行わなくて良いと思いますが、片足のエクササイズは大殿筋に多大な負荷をかけることが可能です。従って「スプリットスクワット」などの負荷もある程度かけることができ、バランスも取る必要がある「半片足エクササイズ」を行うことをおすすめします。
井上 大輔(いのうえ・だいすけ)
兵庫県神戸市出身。滋慶学園大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科トレーニング理論実習講師/整体&パーソナルトレーニングジムを経営(兵庫県明石市)/ NSCACSCS/NPO 法人JFTA 理事長/17歳よりトレーニング開始。大学卒業後、スポーツクラブに就職、スポーツコンサルティング事業にかかわる。同時に操整体トレーナー学院学長松下邦義氏に師事、操整体について学ぶ。/2006年NBBF 全日本選手権 第6位。
NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会 TEL:078-707-3111
文:井上大輔 <NPO法人 日本ファンクショナルトレーニング協会>
提供元・FITNESS LOVE
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